労務とは?人事との違いと仕事内容、スタートアップの労務が担う範囲も解説

「求人に人事労務とあるけれど、労務って何をする仕事なんだろう」

人事と並べて書かれていて、違いが分からないまま求人を読んでいる人もいるかもしれません。

先に答えると、労務とは社員が働くための決まりと手続きを整える仕事です。

労働時間・給与・保険・健康を守る仕組みなどを扱います。

人事は採用・評価・育成、労務は働く条件と手続き、と分けて考えると違いがつかめます。

スタートアップでは、社員が増えるたびに法律で決まった義務が加わり、労務の仕事も広がります。

スタートアップ専門の転職サイト「スタクラ」の求人を数えると、労務の担当が任される範囲も見えてきました。

この記事でわかること

  • 労務とは何か
  • 労務と人事の違い
  • 労務の主な仕事内容
  • スタートアップの労務が担う範囲
  • 労務の求人で確かめたいこと

労務とは?

労務とは、社員が働くための決まりと手続きを整える仕事です。

小学館の辞書「デジタル大辞泉」は、労務の意味の1つを「企業で、労働力の使用・管理に関する事務。」と説明しています[注1]。

会社には、人を雇ううえで法律で決まった義務がいくつもあります。

たとえば、常時10人以上が働く職場では、就業規則を作って労働基準監督署に届け出ます[注2]。

就業規則は、始業と終業の時刻・賃金・退職などの決まりをまとめた社内のルールです。

労働基準監督署は、会社が労働の法律を守っているかを見る国の機関です。

こうした決まりを作り、日々の手続きを回すのが労務の役目です。

労務の仕事を外から支える専門家に、社会保険労務士(社労士)がいます。

社労士は、社会保険労務士法にもとづく国家資格を持つ人です[注3]。

労務と人事の違いは?

人事は人を採って活かし、労務は働く条件を守る仕事です。

ただし、法律で人事と労務の線引きを決めた定義はなく、会社によって分け方は違います。

分け方の一例を表にすると、次のようになります。

比べる点 人事 労務
主な目的 人を採り活かす 働く条件を守る
主な仕事 採用・評価・育成 勤怠・給与・保険
関わる相手 候補者と社員 社員と役所

小さな会社では、1人が人事と労務の両方を受け持つこともあります。

スタクラで自社の労務を募集する求人18件のうち、10件はタイトルに人事や採用も並べていました[注7]。

似た言葉の総務は、オフィスや備品など会社全体の運営を支える仕事です。

経理は、お金の出入りを記録して1年の結果をまとめる仕事です。

労務の仕事内容は?

職場でパソコンの勤怠の画面を見ている場面

労務の仕事は、入社から退社までの手続きと、働く環境の管理に分かれます。

主な仕事は次の5つです。

  • 勤怠と労働時間の管理
  • 給与計算
  • 社会保険と労働保険の手続き
  • 就業規則や社内規程の整備
  • 健康診断などの安全衛生の管理

勤怠は、出勤と退勤の時刻や休みの記録のことです。

社会保険は健康保険と厚生年金、労働保険は雇用保険と労災保険を指します。

これらの手続きは、社員の入社や退社のたびに発生します。

勤怠の管理では、働く時間が決められた範囲に収まっているかを見るのが大事な仕事です。

会社は原則として、1日8時間・1週間40時間を超えて働かせることができません。

超えて働かせるには、時間外労働の協定を結び、届け出る必要があります。

協定を結ぶ相手は、社員の過半数でつくる労働組合か、その代わりとなる社員の代表です。

この協定は、労働基準法の第36条で決まっているので36協定とも呼ばれます[注4]。

36協定の準備や届け出も、勤怠を管理する労務が受け持つ仕事の1つです。

給与計算では、働いた時間をもとに残業代を出し、保険料を差し引きます。

社員からの「育児休業を取りたい」「残業代が合っているか知りたい」といった相談に答えるのも労務の仕事です。

労務の仕事が、スタートアップでどう募集されているかを見られます。

スタクラでは、独自の審査を通ったスタートアップの求人を掲載しています。

スタートアップの労務の範囲は?

会議で仕組みを説明している場面

スタートアップの労務は、会社が大きくなるたびに新しい仕組みを作るところまで担います。

働く人の数で、会社に課される義務が変わるからです。

  • 常時10人以上なら就業規則を作って届け出る[注2]
  • 常時50人以上なら衛生管理者と産業医を選ぶ[注5]
  • 2028年4月からは50人未満の職場もストレスチェックが義務になる[注6]

人数は、事業場と呼ばれる職場の単位で数えます。

衛生管理者は職場の環境を点検して病気を防ぐ人、産業医は社員の健康を見る医師です。

ストレスチェックは、社員が答える質問票で心の負担の度合いを調べる仕組みです。

数年で社員が何倍にも増える会社では、これらの節目が次々に来ます。

スタクラの求人を数えると、任される範囲が具体的に見えてきました。

2026年10月19日にスタクラに載っていた2,286件のうち、タイトルに労務の語が入る求人は27件(17社)でした。

27件のうち9件は、労務のシステムや代行を他社に提供する会社の求人です。

残る18件が、自社の労務を担う人を募集する求人でした[注7]。

自社の労務を募集する18件の仕事内容に書かれていた語を数えると、次のとおりでした。

  • 社会保険と労働保険の手続き(16件)
  • 勤怠と労働時間の管理(14件)
  • 給与(13件)
  • 就業規則と規程(11件)
  • 上場の準備(9件)
  • 安全衛生(7件)

上場は、株式を証券取引所で売り買いできるようにすることです。

手続きと勤怠の管理は、ほとんどの求人に書かれていました。

18件中9件が上場の準備に触れていた点が、スタートアップらしいところです。

たとえば、ワイヤレス給電の技術を持つスタンフォード大学発のエイターリンク株式会社の求人です。

ミッションに「上場審査に耐えうる強固なガバナンス構築」と書かれていました。

ガバナンスは、会社を決まりどおりに正しく運営するための仕組みのことです。

仕事内容には、上場の審査に向けた労務の整備のほか、就業規則の見直しや36協定の運用が並んでいます[注8]。

自社の労務を募集する18件のうち9件は、外部の社労士との連携を書いていました[注7]。

宇宙ビッグデータを活かしたサービスを提供する株式会社天地人は、「一人目の労務専任担当」を募集していました。

給与計算や社会保険の手続きは、外部の社労士と連携して担当すると書かれています[注9]。

スタートアップの労務では、全部を自分で処理するより、外部の専門家と組んで仕組みを作る力が求められる場面があります。

労務の求人では何を確かめる?

自宅でスマートフォンで求人を読んでいる場面

労務の求人を見るときは、任される範囲が分かる次の4つを確かめると、入社後の食い違いを減らせます。

1. 自社の労務を担うのか他社向けのサービスを売るのか

2. 給与計算や保険の手続きを自分で担うのか外部の社労士と組むのか

3. 上場の準備をしているか

4. 人事・総務・経理を兼ねるか

1つ目は、タイトルに労務とあっても仕事が大きく違うので特に大事です。

自社の労務を担う仕事は社内の仕組みづくり、サービスを売る会社では他社がシステムを使い始める手伝いが中心です。

2つ目と4つ目は、会社の人数と成長の段階によって変わります。

会社の成長の段階の見分け方は、自分に合うスタートアップはどのフェーズ?で詳しく解説しています。

求人に書かれていないときは、面談や面接で今の労務の体制と、自分が担う範囲を聞くと確かめられます。

仕事内容の欄まで読んで、任される範囲を比べられます。

登録すると、気になる会社に話を聞いたり、応募したりできます。

労務の求人を探す▶

労務についてよくある質問

人事労務とは何ですか?

人事労務は、人事と労務の仕事をまとめて呼ぶ言い方です。

人事労務の求人では、採用や評価と、勤怠や保険の手続きの両方を受け持つことがあります。

小さな会社では、総務や経理まで1人の担当が兼ねることもあります。

スタクラで自社の労務を募集する18件のうち5件は、タイトルに経理や総務などの仕事も並べていました[注7]。

労務の仕事に資格は必要ですか?

社内で労務を担うのに、決まった資格は求められていません。

スタクラの18件のうち、社労士の資格を書いていた5件は、どれも歓迎する条件としての記載でした。

そのうち2件は、衛生管理者の資格もあわせて歓迎していました[注7]。

社労士の資格がないとできないのは、他人から報酬を受けて手続きの書類作成などを仕事として請け負うことです[注10]。

労務は未経験からなれますか?

今回数えたスタクラの18件には、未経験を歓迎すると書いた求人はありませんでした[注7]。

必須の条件には、会社での労務の実務経験を挙げる求人が見られました。

総務で入社や退社の書類を担ってきた人は、すでに労務の仕事の一部を経験しています。

手続きの経験を広げながら、勤怠や給与計算まで担当の範囲を増やしていくのが現実的な進め方です。

隣の職種へ少しずつ仕事を広げる考え方は、未経験でも挑戦できる?「染み出し」というキャリア戦略で紹介しています。

労務とは何かのまとめ

労務とは、社員が働くための決まりと手続きを整える仕事です。

人事が人を採って活かすのに対し、労務は働く条件を守る仕事です。

スタートアップでは社員が増えるたびに義務が加わり、仕組みを作るところから任されることがあります。

求人を見るときは、自社の労務か・外部との分担・上場の準備・兼務の4つを確かめてから応募を決めてください。

参考・出典

[注1]コトバンクデジタル大辞泉「労務」(2026年10月19日に確認)

[注2]e-Gov法令検索労働基準法 第89条 就業規則の作成と届出の義務(2026年10月19日に確認)

[注3]全国社会保険労務士会連合会社労士とは(2026年10月19日に確認)

[注4]厚生労働省労働時間・休日 法定の労働時間と時間外労働協定(2026年10月19日に確認)

[注5]e-Gov法令検索労働安全衛生法施行令 第4条と第5条 衛生管理者と産業医を選ぶ事業場の規模(2026年10月19日に確認)

[注6]厚生労働省ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策(2026年10月19日に確認)

[注7]2026年10月19日にスタクラの求人一覧に載っていた2,286件(審査を通って公開中のもの)から集計 労務で検索して出た求人のうちタイトルに労務が入る27件を数えた。労務のシステムや代行を他社に提供する2社の9件を除いた18件の仕事内容と応募条件の欄で語を数えた。数えた語は社会保険・労働保険・入退社/勤怠・労働時間/給与/就業規則・規程/上場・IPO(株式の新規公開)/安全衛生・健康診断・ストレスチェック・産業医/社労士/衛生管理者/未経験

[注8]スタクラエイターリンク株式会社の求人(労務リーダー)(2026年10月20日に確認)

[注9]スタクラ株式会社天地人の求人(労務スペシャリスト)と会社のページ(2026年10月20日に確認)

[注10]e-Gov法令検索社会保険労務士法 第27条 社労士でない者の業務の制限(2026年10月19日に確認)

この記事を書いた人

岡田 七海

岡田 七海

株式会社スタートアップクラス マーケティング部 スタートアップ転職メディア「スタートアップマガジン」の企画・編集・執筆を担当。