みなし残業とは?求人票の固定残業代を読むときの3つのポイントを解説

「月給には、45時間分の固定残業代を含みます」。

転職先を探していて、求人票のこの一文で手が止まった人もいるかもしれません。

残業代がもう出ないのか、毎月45時間も残業があるのか、気になるところです。

先に答えると、みなし残業は決まった時間分の残業代を月給に含めて先に払う仕組みを指す呼び名です。

国の資料では、この仕組みを「固定残業代」と呼びます。

決まった時間を超えた分は、会社が別に払う必要があります。

スタートアップの求人サイト「スタクラ」で数えると、固定残業の時間が読み取れた21社のうち15社が45時間分でした。

では、45時間分と書いてあれば、毎月45時間の残業があるのでしょうか。

読み終えるころには、求人票の固定残業代のどこを読み、面接で何を聞けばいいかが分かります。

この記事でわかること

  • みなし残業(固定残業代)とは何か
  • 決まった時間を超えたら残業代は出るか
  • 求人票の固定残業代を読むときの3つのポイント
  • スタクラの求人で多い固定残業の時間

みなし残業とは?

求人票の給与の表と電卓が机に置かれている場面

みなし残業とは、決まった時間分の残業代を、残業の有無にかかわらず定額で払う仕組みを指す呼び名です。

厚生労働省は、この仕組みを「固定残業代」と呼び、「みなし残業代」などと呼ばれることもあると説明しています[注1]。

法律では、残業のことを「時間外労働」と呼びます。

求人を出す会社に向けたリーフレットでは、固定残業代を次のように説明しています[注2]。

「固定残業代」とは、その名称にかかわらず、一定時間分の時間外労働、休日労働および深夜労働に対して定額で支払われる割増賃金のことです。

割増賃金は、残業や休日の労働、夜10時から朝5時までの労働に上乗せして払うお金のことです[注5]。

固定残業代には、基本給に組み込む形と、基本給とは別の手当で払う形があります[注1]。

なお、労働基準法には「みなし労働時間制」と呼ばれる名前の似た制度もあります。

働き方を本人に任せる「裁量労働制」もその1つで、実際に働いた時間ではなく、決めた時間を働いたとみなします[注3]。

みなし労働時間制は働いた時間の数え方の決まりで、残業代の払い方である固定残業代とは別のものです。

みなし残業の時間を超えたら残業代は出る?

夜のオフィスで、男性がノートパソコンに向かって残業している場面

決まった時間を超えて働いた分は、会社が残業代を追加で払う必要があります。

厚生労働省は、固定残業代が法律の計算で出した残業代より少ないときは、差額を払う必要があると説明しています[注1]。

法律の計算では、残業1時間あたり、ふだんの1時間分の賃金に25%以上を上乗せします。

1か月の残業が60時間を超えた分は、50%以上の上乗せです[注4・注5]。

最高裁判所は、基本給のどこまでが残業代か区別できない給与について判断しています。

その給与では、会社は基本給とは別に残業代を払う必要があるとされました[注6]。

固定残業代は残業代の前払いで、決まった時間を超えた分の残業代がなくなる仕組みではありません。

固定残業代の時間と金額は、求人票の給与や待遇の欄で確かめられます。

スタクラでは、独自の審査を通ったスタートアップだけを厳選して掲載しています。

実際の求人票を見てみる▶

求人票の固定残業代を読むときの3つのポイントは?

面接で、応募者が面接官に給与の条件を質問している場面

求人票の固定残業代は、固定残業代を除いた基本給・時間と金額・超えた分の払い方の3つを読みます。

厚生労働省は、固定残業代がある求人では、この3つを全部書くよう求めています[注1・注2]。

ハローワークに寄せられる「求人票と実際の条件が違う」という申し出で、一番多かったのは固定残業代を含む賃金の話でした[注2]。

2026年10月18日時点でスタクラに載っていたある求人には、次の1行がありました[注8]。

固定残業代30時間分(5.9~12万円)/月込み・超過分支給

この1行には、3つのうち「時間と金額」と「超えた分の払い方」の2つが入っています。

固定残業代を除いた基本給は、この1行からは分かりません。

①固定残業代を除いた基本給はいくらか

求人票の月給には、固定残業代が含まれていることがあります。

たとえば月給30万円でも、固定残業代が6万円なら、固定残業代を除いた基本給は24万円です。

残業代の計算のもとになるのは、固定残業代を除いた賃金です[注1・注4]。

月給の額だけで比べず、固定残業代を除いた基本給の額も見比べます。

②固定残業は何時間分でいくらか

時間と金額が書いてあれば、固定残業代が法律の計算に足りているかを自分で確かめられます。

1. 固定残業代を除いた月給を、月の平均の所定労働時間(会社が決めた働く時間)で割る[注7]

2. 1の金額に1.25を掛けて、残業1時間あたりの額を出す

3. 2の金額に固定残業の時間を掛け、求人票の固定残業代と比べる

1で割る月給には、通勤手当や家族手当などは入れません[注4]。

勤務時間が9時から18時(休憩1時間)で月20日働くなら、所定労働時間は160時間ほどです。

手当がなく、固定残業代を除いた月給が24万円なら、1時間あたりは1,500円です。

残業1時間あたりは1,875円で、30時間分は56,250円になります。

固定残業代が30時間分で6万円なら、計算した56,250円を上回るので足りていると分かります。

同じ6万円でも45時間分なら、計算した額は84,375円です。

この場合は固定残業代が計算した額に足りていないので、会社は差額を払う必要があります[注1]。

③超えた分を追加で払うと書いてあるか

厚生労働省の記載例では、「○時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」と書きます[注2]。

求人票では「超過分別途支給」のように短く書かれることもあります。

スタクラでも、固定残業代の記載がある求人139件のうち122件が、超えた分を払うことを書いていました[注8]。

書かれていない場合は、面接や内定後の条件の説明で、超えた分の払い方を聞いておきます。

3つのポイントを、気になる会社の求人票に当てて読めます。

求人の年収の欄は、無料の会員登録で見られます。

スタクラの求人では固定残業は何時間分が多い?

スタクラの求人では、固定残業は45時間分が一番多く載っていました。

2026年10月18日時点で、スタクラには求人が2,290件載っていました。

そのうち固定残業代の記載があるのは139件(34社)です。

固定残業の時間が読み取れた100件を分けると、次のとおりです[注8]。

固定残業の時間 求人 会社
20時間 2件 1社
30時間 5件 3社
40時間 4件 3社
45時間 89件 15社

多くの求人を出している会社もあるので、会社の数も並べました。

会社の数で見ても、時間が読み取れた21社のうち15社が45時間分でした。

45時間は、労働基準法が決める残業の上限(原則は月45時間)と同じ時間です[注4]。

ただし固定残業の時間は、残業代を先に払う分として決めた時間で、実際の残業時間ではありません。

厚生労働省の記載例でも、固定残業代は「時間外労働の有無にかかわらず」払う手当として書かれています[注2]。

45時間分と書いてあっても、毎月45時間の残業があるとは限らないということです。

実際の残業の多さは、面接で月の平均の残業時間を聞いて確かめます。

固定残業の時間を、会社ごとに見比べられます。

スタートアップの求人を見る▶

みなし残業についてよくある質問

みなし残業は違法ですか?

仕組みそのものは、違法ではありません。

前提は、会社が給与のうち固定残業代がいくらかを分けて示していることです。

固定残業代が足りない月は、会社が差額を払う必要もあります[注1]。

定時で帰っても固定残業代はもらえますか?

求人票に「時間外労働の有無にかかわらず」払うと書いてあれば、受け取れます。

厚生労働省の記載例も、残業がない月も決まった額を払う書き方です[注2]。

労働条件の書面にも同じ書き方があるかを、内定後に見ておきます。

みなし残業45時間はきついですか?

45時間は、労働基準法が決める残業の上限の月45時間と同じです[注4]。

実際の残業時間は固定残業の時間とは別なので、面接で月の平均を聞いて確かめます。

裁量労働制とは何が違いますか?

裁量労働制は、実際に働いた時間ではなく、決めた時間を働いたとみなす制度です[注3]。

固定残業代は残業代の払い方で、働いた時間の数え方は変わりません。

みなし残業とは何かのまとめ

みなし残業は、決まった時間分の残業代を月給に含めて先に払う固定残業代を指す呼び名です。

決まった時間を超えた分は、会社が残業代を追加で払う必要があります。

求人票では、固定残業代を除いた基本給・時間と金額・超えた分の払い方の3つを読みます。

スタクラの求人では45時間分が一番多く、これは残業代を先に払う時間で、実際の残業時間ではありません。

3つのポイントを当てて、気になる会社の求人票を読んでみてください。

参考・出典

[注1]厚生労働省 スタートアップ労働条件「固定残業代を支払うこととすれば、残業や休日勤務をさせても別途に残業代を支払わなくてよいでしょうか?」(2026年10月18日に確認)

[注2]厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク リーフレット「固定残業代を賃金に含める場合は、適切な表示をお願いします。」(申し出の内訳は厚生労働省職業安定局調べ・平成29年度。2026年10月18日に確認)

[注3]e-Gov法令検索 労働基準法(第38条の2・第38条の3・第38条の4。2026年10月18日に確認)

[注4]e-Gov法令検索 労働基準法(第36条第4項・第37条第1項と第5項。2026年10月18日に確認)

[注5]厚生労働省・中小企業庁 リーフレット「2023年4月1日から月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられます」(2026年10月18日に確認)

[注6]裁判所 最高裁判所第一小法廷 平成24年3月8日判決(平成21(受)1186)(2026年10月18日に確認)

[注7]e-Gov法令検索 労働基準法施行規則(第19条。2026年10月18日に確認)

[注8]2026年10月18日時点でスタクラの求人一覧に載っていた2,290件の、ログインせずに見られる本文から集計。「固定残業」「みなし残業」「見込み残業」などの記載がある139件(34社)を数えた。時間は記載から読み取り、「30〜45時間分」のような幅は上の時間で数えた。会社の数は時間ごとに数えたので、合計は21社と合わない

この記事を書いた人

岡田 七海

岡田 七海

株式会社スタートアップクラス マーケティング部 スタートアップ転職メディア「スタートアップマガジン」の企画・編集・執筆を担当。