
日本の研究者が、世界と伍するテクノロジーを生み出すには──。
量子通信スタートアップ・LQUOM(ルクオム)を率いる新関和哉氏は、「研究者が正当に評価される社会をつくりたい」という想いから起業。
危機感や不安を原動力に挑戦を重ね、仲間とともに築いてきた採用と組織づくり。
日本のディープテックが再び世界に光を取り戻すために、何を見つめ、どう未来を描こうとしているのかを伺いました。

代表取締役
新関 和哉氏
2018年:修士1年次に筆頭著者として論文を出版(横浜国立大学よりプレスリリースあり)。また、日本物理学会2019年秋季大会にて学生優秀発表賞を受賞 2019年:横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻修士課程(博士課程前期)修了。卒業時には優秀学生工学府長表彰等3件の賞を全受賞
2022年:同大学にて博士課程(博士課程後期)修了。卒業時に優秀学生工学府長表彰等を再び受賞。
2023年:Forbes 30 Under 30 Asia に選出。

LQUOM株式会社
https://lquom.com/
- 社員数
- ~30人
《Mission》
絶対安全な量子インターネットの実用化を目指して
《事業分野》
Iot
《事業内容》
量子コンピュータの実用化により、従来の暗号通信は瞬時に解読されるリスクがあり、高度なセキュリティーを必要とするIoT・自動運転・遠隔医療・金融・軍事分野においては、新たな通信技術が強く求められています。私たちLQUOMは、絶対的な安全性を保証する長距離量子通信の研究開発を行い、社会実装を目指します。
- 目次 -
研究者として感じた「日本の技術が埋もれてしまう」危機感
大学在学中に起業されたと伺いました。研究者から経営者へどのようなきっかけがあったのでしょうか。
横浜国立大学で学部から博士まで一貫して量子通信を研究していました。当時から「日本のモノづくりの根幹を支えるため、研究の評価や研究者の地位向上に寄与したい」と考えていました。また、日本の最先端技術は当時でさえも海外に圧迫されてしまっていて、「このままでは日本の技術が埋もれる、日本がつぶれる」とまで強い危機感を持っていました。 そんな中で自分が研究していた量子通信は“ただ情報を処理するだけ”ではなく“人や産業をつなぐ”技術。この分野ならまだまだ世界と戦えるという思いから会社を立ち上げました。
その時って、どんな感情なのでしょうか?
危機感もありましたし、不安もすごく大きかったです。「日本から最先端技術が出てこなくていいの?」と。結局、自分たちが“作る側”ではなく“使う側”になってしまう。それが国としても個人としても不安感がありました。
セレンディピティ──偶然とご縁がつないだ創業
危機感や不安を持っても動かない人も多い中で、なぜ動き出せたのでしょう?
本当に「ご縁」でしたね。 当時自分自身もすごく良い研究をさせてもらう環境があって、研究室の准教授(いまは教授)のご支援や周囲の理解ある仲間の存在が後押ししてくれました。
そうした偶然のつながりが、まさにセレンディピティ(ご縁)だったと思います。私の量子情報の業界ではコインシデンスという言葉(※量子もつれの測定指標)も研究者界隈で良く使われるのですが、このような巡り合わせこそが会社の大きな推進力につながっていると感じています。
一人目の仲間を“自ら迎えに行った”
創業初期の採用について伺いたいです。最初のメンバーとはどのように出会ったのでしょうか。
いわば“自分の手で取りに行った”採用です。同じ大学の中で研究をしていた方でした。研究開発が大好きで、スタートアップマインドもあった。
「こんな人が大企業でワンオブゼムになるのはもったいない。もっと輝ける場を作りたい」そんな思いで、何度も家まで 足繁く通い「一緒にやろう」と口説いて、ようやくジョインしてもらいました。
ご縁がつないだ初期チーム、リファラルの限界
2人目、3人目の採用はどんな経緯でしたか?
次のメンバーは、研究室の卒業生たちでした。 大企業で働いていたけれど、せっかくの研究を腐らせたくないという同じ思いを持つ仲間たちで、ほぼ同時期に2名ジョインしてくれました。
同じ研究分野で過ごした時間があったからこそ、お互いの技術や姿勢を理解できていましたし、スムーズに意志疎通ができました。
組織が大きくなる中で、リファラル採用の限界もあったのでは?
量子の分野って母集団がとにかく少ない。知り合いに声をかけても、ほとんどの人がすでに長期プロジェクトに入ってるんですよ。
だから、リファラルだけではスケールしないと早い段階から感じており、やりたいこととできることとの乖離を埋めていくために、「採用の仕組みをちゃんと作らなきゃいけない」と痛感していました。
採用プロセスを整えるフェーズに入ったのが、まさにこの時期です。
「右も左もわからない」から始まった外部採用

外部採用に踏み出した時、最初に困ったことは?
「何もわからん。」ということですね。会社を成功させた経験がないから手ごたえを感じにくかった。でも、スタートアップとしては最短経路を突き進みたいという強い焦りがありました。
だからまずはエージェントに相談して、求人票の作り方から学びました。研究者と一口に言っても、実験経験も理論経験もマネジメント経験もバラバラ。相談する前は「同じ分野ならいいのかな」くらいに思っていたんですけど、それでは会社が成長しないと感じ、ちゃんと要件定義をしてペルソナを作るところから始めました。
採用は、人の人生と向き合う仕事。その人のキャリアにどう寄り添えるかを考える時間が、純粋に楽しかったです。
HR体制を整え、“任せる覚悟”との葛藤
最近HR体制を作られたと伺いました。
数か月前に、採用担当を置いてチームで採用もできるようにしました。
それまではスカウトも面談も全部自分でやっていましたが、ようやくチームで動けるようになった実感があります。
組織を作ることに不安はありませんでしたか?
正直「自分でやったほうが良いのでは」と思ってしまう瞬間もあります。独りよがりもいいところですね。
でも任せなければ組織は伸びない。信頼して委ねる覚悟を学んでいるところです。
今は採用が可視化され、再現性も上がってきました。カルチャーが言語化され始めたのも大きな変化ですね。
ビジネス人材の採用で得た気づき——“面白がる力”こそ最強のスキル
現在、研究職と事業開発職の比率はどのくらいでしょうか。
研究が約15名、ビジネスが4名ほどです。今後は更に体制を強化したいと思っています。
ビジネスサイドの採用では、どんな人を求めていますか?
一番重視しているのは「面白がれる力」です。
量子通信に限らず量子業界では未知の領域が多いので、好奇心を持って学べるかが大事です。
実際、非常に多くの候補者と会ってきましたが、互いに尊重しながら、自分の意見や気持ちを率直に伝えられたり、協調的、いわゆるアサーションができる人ほど定着しています。
スキルは極端な話ですが後から学べます。カルチャーフィットや「これ面白いね!どんな世の中になるんだろう?」と思っていただけることの方が何倍も重要だと考えています。
「採用=セレンディピティ」──すべては“ご縁”の連鎖
三年後、組織をどうしていきたいですか。
採用体制は整いましたが、次の挑戦は「流入を増やす」こと。新卒も中途も、幅広く受け入れられる組織にしたいですね。
そして、分野を超えて研究者を事業開発にコンバートできるような仕組みも作りたい。研究とビジネスの垣根を超えて、人が行き来する環境が理想です。
採用は、偶然の出会いの連続だと思っています。
セレンディピティやコインシデンスが次の挑戦を生み、また新しい出会いを呼ぶ。“わからないことを面白がる文化”を大切にしながら、LQUOMは量子通信で世界に挑み続けます。
編集後記
研究者としての探究心と、経営者としての胆力。その両方を併せ持つ新関氏の言葉は、どこまでも誠実で、挑戦に満ちていました。 危機感や不安をエネルギーに変え、偶然の出会いを力に変えて進む姿は、まさにスタートアップの本質です。
「わからないことを面白がれる力が何より大事」と語った新関氏。 セレンディピティを信じながら挑み続けるLQUOMの歩みが、これからの日本のディープテックに新たな光を灯すことを心から願っています。

LQUOM株式会社
https://lquom.com/
- 社員数
- ~30人
《Mission》
絶対安全な量子インターネットの実用化を目指して
《事業分野》
Iot
《事業内容》
量子コンピュータの実用化により、従来の暗号通信は瞬時に解読されるリスクがあり、高度なセキュリティーを必要とするIoT・自動運転・遠隔医療・金融・軍事分野においては、新たな通信技術が強く求められています。私たちLQUOMは、絶対的な安全性を保証する長距離量子通信の研究開発を行い、社会実装を目指します。
