20年キャリアの先にライノフラックスへ──“スタートアップ生涯現役”への挑戦

ライノフラックス株式会社チーフメカニカルエンジニア 佐竹好史氏

「スタートアップで生涯現役として活躍し続けたい。」
そう語るのは、エンジニアリング会社で20年以上勤めてから京都大学発のディープテック、ライノフラックスへ転職した佐竹さんです。

ライノフラックスでエネルギー課題の解決に挑むいま、日々どんなやりがいを感じ、どんな未来を描いているのか。スタートアップでのキャリアに悩む方へのメッセージとともに、じっくり伺いました。

佐竹好史氏

チーフメカニカルエンジニア
佐竹好史氏

大学院を卒業後、エンジニアリング会社に入社。設計・開発エンジニアとして機械設計を主に担当し、医用機器や分析計測機器など様々な開発に携わり20年ほど経験を積み重ねる。2024年に、社会課題解決に携わりたい想いでライノフラックスに参画。これらの経験・知識を活かしながら、日々新たなチャレンジに挑んでいる。

ライノフラックス株式会社

ライノフラックス株式会社
https://rhinoflux.com/

設立
2024年04月

■ビジョン
分散型のエネルギー生産とCO2回収があらゆる場所で行われる未来の実現

■ミッション
地球に存在する膨大な資源の価値を科学の力によって解放する

■事業内容
バイオマス資源を従来のように燃やすことなく、水溶液との化学反応を用いた新しいエネルギー変換技術で、クリーンな電力と高純度のCO2として高効率に回収できる。
当技術を軸に、“ライノハウス”と呼ばれる次世代のエネルギー変換プラントを設計・開発。

これまでの経験・原体験:エンジニアリング会社で多様な機械設計を経験

スタクラ:

これまでのキャリアの変遷について教えてください。

ライノフラックス株式会社 チーフメカニカルエンジニア 佐竹好史氏(以下敬称略):

学生時代の就職活動では、関西圏で機械設計に関われる仕事を探していました。
そして新卒で大手企業のエンジニアリング会社に入り、重さ1~2トンの大型医療装置から卓上サイズの機器まで、多様な領域を経験。
当時は社会課題への意識はそこまで高くなかったものの、医療・分析といった人の命や研究に直結する領域に携わったことで「自分の仕事が社会につながっている」という感覚は早い段階から持てていましたし、徐々に責任のある立場にもなりやりがいは持てていました。

転職した理由:コロナ禍で気づいた「本当にやりたいこと」

スタクラ:

エンジニアリング会社から転職を考えたきっかけは?

佐竹好史:

大きな転機はコロナ禍です。事業が守りに入り、開発テーマが減少。最終的に5〜6人いたチームが自分1人になり業務が変わりました。その時、「自分が辞めても組織は回る」という冷静な感覚が生まれ、キャリアを見つめ直しました。

日々、食やエネルギー不足に関するニュースを目にし、日本が抱える社会課題への危機感が高まりました。「この課題解決に関わりたい」という思いが強くなり、スタートアップの世界を調べ始めるようになりました。

実際、家族を支える身としてスタートアップ転職には迷いもありました。ただ、国の支援政策や市場動向を徹底的に調べ、「挑戦が失敗に終わっても次の機会はある」と思えることができた。ちゃんと納得したうえで決意ができました。

佐竹好史:

アマテラス(現スタクラ)に登録したのは、代表藤岡さんの書籍の内容に共感したからです。挑戦する個人の人生に向き合ってくれるパートナーがいることは、大きな安心材料になりました。

その中で出会ったのが、ライノフラックスでした。同社が挑むのは、豊富に存在するバイオマス資源を活用し“燃やさずに電気を生み出す発電技術”。この技術が実現すれば、日本のエネルギー自給に寄与し、世界の地域課題にも貢献できる可能性があります。「インフラレベルの技術で社会課題を解決する」という壮大なミッションに強く惹かれました。

面談では間澤代表が「会社にとってだけでなく、あなた自身にとって良い選択なのか」を真剣に何度も確認してくれたのがとても嬉しかったです。

場所が関西ということや、事業テーマと自身の想いも重なり、応募企業はライノフラックス1社のみ。まさに運命的な出会いでした。

現在の仕事とチャレンジ:顧客の声がダイレクトに届く環境でのやりがい

スタクラ:

現在のお仕事の内容と、やりがいを教えてください。

佐竹好史:

チーフメカニカルエンジニアとして、発電装置のコア部分である「セル」の設計、実験計画、検証、改善まで幅広く担当しています。
また、顧客も直接担当しています。エンジニアリング会社時代は「仕様書をもとに設計する」仕事が中心で、ユーザーの生の声を聞く機会はほとんどありませんでした。今は、現場でのお困りごとや期待を直接伺い、その場で議論しながら設計に反映できる。大変ではありますが、自分のアウトプットが誰のどんな課題を解決しているのかを実感しながら仕事ができるのは、何よりのやりがいです。

もちろん、チャレンジは山ほどあります。化学の知識は決して得意ではなかったので、一から勉強し直しましたし、英語でコミュニケーションを取るメンバーも増えたため、語学面でも鍛えられています。それでも、「自分が本当にやりたいことを選んでいる」という実感があるから、しんどい局面でも踏ん張れるんだと思います。

大きい企業とは裁量の大きさが全く異なり、承認プロセスに時間を取られず、“とりあえず試してみる”というカルチャーでスピード感があり、自由度と成長実感は何倍もあると思います。

今後のビジョン:「生涯現役」で挑戦し続けるキャリアをめざして

スタクラ:

今後のキャリアの展望を教えてください。

佐竹好史:

まずはライノフラックスの技術を社会実装し、日本のエネルギー自給に貢献したい。バイオマスは潜在資源が豊富で、世界の地域課題にも応用できる可能性があります。
その未来を想像すると、まだまだやるべきことがたくさんあると感じます。そして日本が エネルギー的にも安定する未来が本当に来たら凄く嬉しいですし、ワクワクしますね。

また、個人としては「生涯現役」でスタートアップに関わり続けることが目標です。70歳、75歳になっても、自分の技術と経験を必要としてくれるスタートアップがある状態をつくりたい。もしこの先何かがうまくいかなかったとしても、スタートアップのエコシステム全体はこれからますます広がっていくはずです。その中で、次の挑戦を支える側に回ることも含めて、長く第一線にいたいと考えています。

スタートアップを目指す人へのメッセージ

スタクラ:

スタートアップに関心がある方に、メッセージをお願いします。

佐竹好史:

スタートアップは正直大変です。結果も求められますし、不確実なことも多い。ただ、日本には思っている以上にセーフティネットがあります。十分に情報収集し、納得したうえで飛び込めば、失敗してもやり直しはできます。

やはり大切なのは「他人の価値観」ではなく「自分の価値観」でキャリアを選ぶこと。やっていることが、本当に自分のやりたいことなのか、ぜひ一度立ち止まって考えてみてほしいです。

ディープテックは新しい技術で社会課題に挑める場です。食やエネルギー、環境問題など、地球規模のテーマに自分の技術で関わりたい人にとって、これほど面白いフィールドはなかなかありません。少しでも興味があるなら、ぜひ情報収集からでも一歩踏み出してみてください。
私自身、40代半ばで転職しましたが、今は「本当に転職してよかった」と心から思っています。挑戦を楽しみながら働けているので、同じように悩んでいる方の背中を、少しでも押せたら嬉しいです。

編集後記

「大変だけど楽しさが上回る」そう語ってくださったのがとても印象的でした。
自分の価値観を振り返り、納得がいくまで情報収集し、新たなキャリアを切り開いた佐竹さんの背中は、沢山の方に気づきをもたらしてくれると感じます。
キャリア、今後の人生を考えるきっかけとなれば幸いです。

この記事を書いた人

スタクラ編集部


スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

ライノフラックス株式会社

ライノフラックス株式会社
https://rhinoflux.com/

設立
2024年04月

■ビジョン
分散型のエネルギー生産とCO2回収があらゆる場所で行われる未来の実現

■ミッション
地球に存在する膨大な資源の価値を科学の力によって解放する

■事業内容
バイオマス資源を従来のように燃やすことなく、水溶液との化学反応を用いた新しいエネルギー変換技術で、クリーンな電力と高純度のCO2として高効率に回収できる。
当技術を軸に、“ライノハウス”と呼ばれる次世代のエネルギー変換プラントを設計・開発。