【ダイバーシティ賞】ファミワンが証明した「ママ採用」のリアル──柔軟性と共感が、スタートアップの成長エンジンになる(スタクラアワード2025)

株式会社ファミワン代表取締役 石川 勇介氏

専門家による妊活・不妊サポートを原点とし、現在ではオンラインでの心理・看護相談など幅広いヘルスケア支援を手がける株式会社ファミワン。その創業者・石川氏が、なぜママテラスを活用し、どんな人材と出会い、どう採用に至ったのか。今回のインタビューでは、「ママだから採用した」のではなく、「採用したいと思ったその人が、たまたまママだった」──事業と価値観に共感する人材との巡り合い、そしてフルリモートを前提とした柔軟な働き方を通じて築かれるチームの姿に迫った。

■この記事のポイント
・ファミワンでは、共感採用×フルリモートで3名の採用に成功
・ママに備わる“段取り力・柔軟性・対応力”は、変化の激しい環境で大きな武器
・「時間制約=採用リスク」という思い込みを壊すリアルなストーリー
〜ママだから採用したのではなく、求める人物像と自然にマッチした~

石川 勇介氏

代表取締役
石川 勇介氏

自身の妊活で強く感じた課題を解決するため、2015年に株式会社ファミワンを創業しました。専門家の支援がないために一人で抱えてしまったり、知らなかったことを後悔してしまう現状を変えていきます。ウェルビーイング等と呼ばれる社会課題の解決は簡単ではないですが、チームメンバー含む多くの方々の協力があって一歩づつ取り組めています。「子どもを願うすべての人によりそい 幸せな人生を歩める社会をつくる」というビジョンの実現に向け、進み続けます。

株式会社ファミワン

株式会社ファミワン
https://famione.co.jp/

設立
2015年04月

すべての方の健康サポートを軸に様々なサービスを展開している会社です。現在の日本では多くの企業・自治体で人材不足が慢性化しており、企業は競争力強化のため女性活躍推進や人材の多様性を重視する声が高まってきています。ファミワンは、個人向けの相談支援で培ってきた知見を活かし、企業の従業員や自治体の住民をサポートする事業を展開しています。専門家によるオンライン健康相談サービス、ヘルスリテラシー向上のためのセミナーを企業・自治体ごとにカスタマイズしてご提供いたします。個人の方のお悩み・ご相談は所属企業や自治体には共有しないため、専門家によるきめ細やかな寄り添ったサポートを、安心して継続的に利用いただいています。

妊活当事者から始まった、ヘルスケア支援と共感の輪

スタクラ:

まずは現在の事業内容について教えてください。

株式会社ファミワン 代表取締役 石川 勇介氏(以下敬称略):

当社は、看護師や心理士、薬剤師などの専門職がオンラインで相談を受けるヘルスケア支援事業を展開しています。一般の方向けだけでなく、企業や自治体向けの相談支援としても提供しており、月経・PMSから妊活・妊娠・出産・育児・介護・更年期、そしてメンタルケアやハラスメント対策など幅広いテーマに対応しています。

スタクラ:

もともと創業のきっかけは何だったのでしょうか?

石川 勇介:

私自身が妊活・不妊で悩んだ経験があったことが、直接のきっかけです。当時は正しい情報が十分に伝わっておらず、誤解や偏見も多かったので、その状況を変えるために2015年に創業しました。

スタクラ:

現在のチーム体制や働き方についても伺いたいです。

石川 勇介:

社員が約20名、業務委託が同じく約20名ほどのチームです。さらに、看護師や薬剤師など約60名のアドバイザーが関わっています。基本はフルリモートで、時間の使い方はかなり柔軟です。子どものお迎えや通院の中抜けも各自で調整して行っています。

まだ出会えていない人材とつながるための採用転換へ

スタクラ:

これまでの採用はどのように行ってきたのでしょうか?

石川 勇介:

学会やイベント登壇、メディア掲載を見て共感してくれた方が声をかけてくれる形が多かったです。正直、有料の求人媒体はあまり活用してこなかったですね。

スタクラ:

そんな中、ママテラスを活用するようになったきっかけは?

石川 勇介:

組織を強くするために、より多くの方と出会いたいと思ったタイミングだったからです。共感やリファラルでの採用はありがたい反面、どうしても似たような属性・バックグラウンドの人材に偏りがちで、広がりに限界を感じていたんです。今いるメンバーにない視点やスキルを持った人と出会うには、もっと開かれた場での出会いが必要だと思っていました。

その上で、自分たちのビジョンに共感してくれる方と出会いたいと考えていました。生活スタイルや居住地に関係なく、事業や想いに共鳴してくれる方となら一緒に進んでいけるという確信があったからです。ママテラスのような媒体は、そうした出会いの幅を広げる手段として、とてもフィットすると思いました。

実際、元々スタートアップに興味がなかった方が、ママテラスを通じて「思いがけず自分に合う仕事に出会った」というケースもあります。“この属性だから”と決めつけず、「いい人がいるなら会ってみたい」という姿勢でいること。それが、採用成功の鍵を握っていると感じています。

採用したいと思ったら、たまたまママだった──見えてきた相性の良さ

スタクラ:

採用された方は、最初から「ママさんを採用したい」と考えて選んでいたのでしょうか?

石川 勇介:

いえ、特定の属性にこだわった採用はしていません。私たちが重視しているのは「この人と一緒に働きたいか」「この人となら事業を前に進められるか」です。その視点で選考を進めた結果、たまたま多くの方がママだったというだけなんです。

ただこれは偶然というより、ある意味で必然だったのかもしれません。限られた時間で成果を出す集中力や、変化に柔軟に対応する力、そしてチームと目的を共有して動けるスタンス──これらは子育てをしている方に自然と備わっていることが多く、私たちが求める人物像ととても重なります。

私たちのサービスには女性ユーザーが多いですが、「だから女性を採用している」というわけではありません。むしろ、バランスの面から男性メンバーが入った方が良いよね、という話も社内では出ていました。ただ、実際に面談を進めていく中で、「これをやりたい」「チームに貢献したい」といった前向きな姿勢やスタンスを感じられる方と出会ったとき、結果的にそれが女性であることが多かった──というのが正直なところです。

スタクラ:

選考時にはどんな工夫をされていますか?

石川 勇介:

選考では必ず私も出るようにしています。どんな人と一緒に働くのか、私たちからではなく応募いただいたご本人の目からも私含めた会社の姿勢を確かめてもらうことがとても大事だと思っているんです。会社のビジョンや働き方を、直接の対話で伝える機会として大切にしたいですね。

実際にママテラスを通じて、これまでにコンサルティング営業2名・カスタマーサクセス1名を採用しました。導入からわずか3ヶ月で最初の1名が採用に至り、その後も継続的に出会いがあり、利用開始から約9ヶ月で3名の採用が実現しています。それぞれが即戦力としてチームに参画し、営業・CSチームの中核を担っています。

スタクラ:

実際に入社された方々の活躍ぶりはいかがでしょうか?

石川 勇介:

とても心強い存在です。CSや営業など、ポジションはさまざまですが、それぞれが自律的に動きながら、必要に応じてチームをまたいで連携してくれています。

ひとつの業務に閉じず、複数のタスクをバランスよく担ってくれる方が多いので、スタートアップならではの“枠にとらわれない働き方”とも相性が良いと感じていますね。

また、マルチタスク力や細やかな段取り、相手の状況に配慮しながらコミュニケーションを取る姿勢などは、日々の業務の中でも大きな強みとして現れていると感じます。

子育てをしながら働く方は、日々の生活の中で、調整力や段取り力、限られた時間で成果を出す集中力、そして「想定外」にも冷静に対応する力を培っています。スタートアップのような変化の激しい環境において、こうした力はまさに求められるものであり、自然と親和性があると感じています。

フルリモートでも強い組織はつくれる──信頼とカルチャー設計

スタクラ:

フルリモートでのチーム運営に苦労はありますか?

石川 勇介:

もちろんあります。特に難しさを感じるのは、テキストでのやり取りが中心になることで、言葉の背景にある感情やニュアンスを汲み取るのが難しいことです。たとえば「最近どうしてる?」という一言が、ただの関心からの問いかけか、何か不満があるのか、受け手によって違って受け取られてしまうことがある。

そういう小さな行き違いを減らすために、できるだけオープンに、素直にコミュニケーションをすることを意識しています。普段はフルリモートですが、ランチ会を開催したりと集まりやすい時間帯で顔を合わせて会話するようにしていますね。できる限りリモートが良い人、たまには外に出たい人、いろんな人がいて当然だと思うので、そこはできるだけ働くメンバーに合わせたいと思っています。

また、背景が異なるメンバーが集まっているので、常識や前提が揃っていないことも多いんですよね。だからこそ、互いの違いを前提にしたうえで「まず話してみる」「確認してみる」姿勢がとても大切だと感じています。

それでもうまくいっているのは、“何のためにこの事業をやっているのか”が共通していて、ブレていないから。メンバー全員がビジョンに共感してくれていて、目的意識を持って仕事に向き合っているので、自然と前向きで建設的な空気が生まれているんだと思います。

ただ、その一方で、もちろんフィットしない方も一定数いらっしゃいます。弊社は、おそらく外から見てイメージされる数倍は混沌とした状態の、まだまだ黎明期のスタートアップです。潤沢な売上・利益がある訳ではないですし、社内体制も決して十分とは言えません。指示待ちになってしまったり、理想だけを求めていたり、安定志向だったり、成果がなかなか出せなかったりすると、カルチャーギャップを感じることも多いかもしれません。

スタクラ:

カルチャーとして大切にしていることはなんでしょうか?

石川 勇介:

「とにかくやってみよう」という姿勢ですね。計画を立てて丁寧に進めることももちろん大事ですが、変化の激しい環境では、予定通りにいかないことのほうが多いんです。

仕事もそうですけど、子育ても同じだと思うんですよね。育児マニュアル的な“正解”が一応あっても、実際には全然その通りにならないことばかり。離乳食ひとつとっても、思うように食べてくれなかったり。そういう“理想”と“現実”のギャップの中で、優先順位をつけて、諦めたり工夫したりしながら進めていく──そんな日々の繰り返しが育児だと思うんです。

それって、スタートアップの働き方とすごく似ている気がしていて。理想の計画通りにいかなくても、「まずやってみて」「あとは軌道修正すればいい」という、受け身ではなく前向きで柔軟なスタンスが大事。それが自然に身についている方って、すごくスタートアップに向いているんじゃないかと感じています。

ママはハンデではなく戦力。スタートアップが出会うべき人材とは

スタクラ:

今後の採用に期待する人物像はありますか?

石川 勇介:

特定のポジションに限らず、何か一緒に創っていける方を探しています。募集しているポジションに親和性のある経験があれば嬉しいですが、それよりも「共感と柔軟性」が大切です。制約があっても、未経験でも、やれることをしっかりやってくれる方と出会いたいです。

スタクラ:

転職を考えているママテラス登録者の方々へメッセージをお願いします。

石川 勇介:

「子どもが小さいから社員は難しいかな」「時間の制約があるから責任ある仕事は諦めよう」と思ってしまう方も多いかもしれません。でも、それって本当にもったいないと思います。

家庭と両立しながらでも、フルリモートで、柔軟に、やりがいのある仕事をすることは十分に可能です。特にスタートアップのように、変化や挑戦の多い環境では、子育てを通して培った“柔軟さ”や“段取り力”、“想定外への対応力”がむしろ強みになると感じています。

「自分が行ってもいいのかな」と遠慮せず、まずはカジュアル面談などを通して一歩踏み出してみてほしい。それが、ご自身の可能性を広げる第一歩になるかもしれません。

【編集後記】

石川さんのお話で特に印象に残ったのは、「ママ業とスタートアップには共通点がある」という視点でした。目指すゴールがあり、思い通りにいかなくても、その都度工夫して乗り越えていく。柔軟さと粘り強さは、まさにスタートアップに必要な力。ママという存在を、制約ではなく“強み”として捉える採用がもっと広がってほしい──そう感じさせられるインタビューでした。

そして、実はこちらのインタビュー後にスタクラアワード「ダイバーシティ賞 ママテラス部門」の受賞が決定しました。受賞に際しては 後日このようなコメントをいただきました!

スタクラアワード ダイバーシティ賞(ママテラス)受賞コメント
「この度のアワードの授賞、とても嬉しく思っております!弊社の取り組んでいるウェルビーイングやフェムテック等の社会課題は、事業として成立しにくい領域でもあり、常に試行錯誤の連続です。業務の負担は決して軽くはないですが、その分、時間や場所などの働き方は柔軟にして、多様なメンバーと協力しあって進めています。」

この記事を書いた人

絢子小澤


小澤 絢子

上智大学卒業後、リクルートの広告代理店にて新規開拓の営業として約9年ほど勤務。 国家資格キャリアコンサルタント取得後は、個人の就職・転職の支援、キャリアプランニング、自己分析を強みとするキャリアカウンセラーとして従事してきた。これからの日本を牽引するスタートアップ支援というスタクラのビジョンに共感し、2024年10月に参画。 スタートアップへの思い:次世代を作るスタートアップが子どもたちの未来を豊かにすると信じています。志ある起業家の皆様を少しでも支えられるような存在になりたいです。

株式会社ファミワン

株式会社ファミワン
https://famione.co.jp/

設立
2015年04月

すべての方の健康サポートを軸に様々なサービスを展開している会社です。現在の日本では多くの企業・自治体で人材不足が慢性化しており、企業は競争力強化のため女性活躍推進や人材の多様性を重視する声が高まってきています。ファミワンは、個人向けの相談支援で培ってきた知見を活かし、企業の従業員や自治体の住民をサポートする事業を展開しています。専門家によるオンライン健康相談サービス、ヘルスリテラシー向上のためのセミナーを企業・自治体ごとにカスタマイズしてご提供いたします。個人の方のお悩み・ご相談は所属企業や自治体には共有しないため、専門家によるきめ細やかな寄り添ったサポートを、安心して継続的に利用いただいています。