CFO採用成功の舞台裏──急成長スタートアップが描く経営のネクストステップ

株式会社善光総合研究所取締役所長 前川 遼氏

介護業界が直面する人材不足や業務の非効率。社会全体に関わる大きな課題に挑むのが、善光総合研究所です。急成長フェーズで次なるステージに進むためのEXITを見据える同社は、このたびCFO採用を成功させました。経営の根幹を支えるポジションを、なぜ、どのように迎えることができたのか。その舞台裏を取締役所長の前川氏に伺いました。

前川 遼氏

取締役所長
前川 遼氏

2009年厚生労働省入省。老健局にて介護報酬改定担当の課長補佐、大臣政務官室秘書官等を歴任。2020年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、ヘルスケア領域のアライアンスや経団連活動の担当として従事。2022年社会福祉法人善光会に入職し、2023年に株式会社善光総合研究所を立ち上げ、現職。

株式会社善光総合研究所

株式会社善光総合研究所
https://zenkou-lab.co.jp/

設立
2023年04月

《Mission》
ケアを必要とする全ての人々へ
その人らしく生きる ための介護を
サスティナブルに提供できる社会を実現する

《事業分野》
SaaS / 医療・ヘルスケア / シニアサービス / コンサルティング

《事業内容》
当社は、国内トップレベルの生産性を誇るケアオペレーションを構築する社会福祉法人善光会からスピンアウトしたスタートアップ企業です。
介護領域全体のオペレーションの質と効率の向上により介護サービスの持続性を守ることを目的に設立しました。福祉関連事業者や介護テクノロジーメーカーといった様々なプレーヤーの皆様と連携し、介護事業所のDX支援やスマート介護人材の育成、ケアテック企業のトータルの支援を進めています。

急成長の舞台裏──IPOを見据えた経営体制づくり

スタクラ:

はじめに、御社の事業について教えていただけますか。

取締役所長 前川 遼氏(以下敬称略):

私たちは、介護の現場が直面する人材不足や非効率を、テクノロジーと仕組みづくりで解決するスタートアップです。たとえば、介護現場の業務をDXで効率化する自社開発のクラウドサービスや、介護職員がデジタルを使いこなせるようにする研修・資格制度を提供しています。現場の声をすくい上げ、テクノロジーと制度設計を組み合わせることで、介護を「持続可能な社会インフラ」にしていくことを目指しています。その中で社員一人ひとりが幅広い挑戦を経験でき、仲間と一緒に社会を変える一翼を担えることが当社の大きな魅力です。

スタクラ:

現在の事業フェーズについて教えてください。

前川 遼:

私たちの会社はここ数年で急速に成長を遂げ、売上も1億円前後から2桁億円台へと拡大中です。事業はSaaS開発販売、人材研修、メーカー向けの開発支援、そして行政とも連携した事業所の経営改善・現場支援と、多角的に展開しています。組織規模は20〜30名ほどですが、これまで以上に「人」が大切であることを実感しています。事業を成長させ、社会を変えていくためには、人こそが最大の原動力だと思っています。

スタクラ:

その中で特に重要視されたのがCFO採用ということですね。

前川 遼:

そうです。IPOなど次のステージを見据えた経営管理体制の強化が喫緊の課題でした。CFOというポジションは資金調達や経営管理体制構築を担う要であり、会社の未来を決定づける存在。だからこそ、慎重かつ真摯に「人を見る」採用を進めました。

CFO採用のリアル──業務委託から始まる柔軟な一手

スタクラ:

今回、CFOは業務委託からの採用と聞きました。なぜ業務委託スタートという形を選ばれたのですか?

前川 遼:

CFOは経営に深く関わる存在ですが、スタートアップが求めるべきCFOのノウハウをもつ人材は、マーケットの中でも限られた存在です。そこで、そういった方の業務の1つとしての業務委託からスタートし、実際の業務を通じてお互いを知り、信頼関係を築けるかを確認しました。採用を単なる「契約」ではなく「対話と共感の積み重ねの始まり」と捉えたのです。柔軟な入口を用意したことで、会社と候補者双方にとって納得感のある採用が実現しました。

スタクラ:

CFO案件に関しては、どのくらいスカウトを送付したのでしょうか?

前川 遼:

実はスカウトは送付していないというのが実態です。送付しようと思っていたのですが、案件公開後にすぐ10件近くの応募をいただき、5名ほどの方と実際に面談しました。それだけ応募があったにもかかわらず、いわゆるファイナンスの領域の専門家としてのCFO人材は限られており、応募の早さと多さに驚くとともに、その希少性を改めて感じました。

スタクラ:

選考フローはどんな感じでしょうか?

前川 遼:

まずカジュアル面談でお互いの考えを共有し、その後に事業計画や資金調達の実務に関するディスカッションを行いました。形式的な面接ではなく、リアルな課題を一緒に考えるプロセスを重視しました。また、候補者の方には代表や経営陣との対話を複数回設け、「ここでなら本気で働きたい」と思っていただけるよう丁寧に向き合いました。

ペルソナ設計の力──理想のCFO像をどう描いたか

スタクラ:

どのような人物像をCFOの理想像として描いていましたか?

前川 遼:

例えばIPO対応を見据えるような体制を構築する場合、事業会社・証券会社・投資家、それぞれの視点を理解することが必要です。ただしすべてを網羅している方は日本の中にもほとんどいないと認識していて、いずれかの領域で十分な経験を持ち、かつ我々の事業に深く共感してくれる人物。これが明確なペルソナでした。ペルソナを言語化していたことで、候補者の経歴を見たとき「この方は私たちの未来に寄り添えるか」を判断しやすかったですね。

スタクラ:

そのペルソナ像をどう見極めたのですか?

前川 遼:

経歴はもちろんですが、最終的には「人柄」です。経営はチーム戦であり、共感や信頼が欠かせません。最終候補者はどなたも優秀でしたが、最もIPO経験が豊富でありながら、私たちの事業に真摯に共感してくださった方を選びました。

採用成功の分岐点──「経験」と「人柄」をどう見極めたか

スタクラ:

採用成功の要因をどのように振り返りますか?

前川 遼:

2つあります。ひとつはCFO像を代表と私の間でしっかり言語化し、ペルソナを明確にしていたこと。もうひとつは正社員にこだわらず、業務委託から始めて相互理解を深める柔軟さを持っていたことです。経験と人柄、その両輪が揃う方を迎えることができたのは、この準備と姿勢があったからこそだと思っています。

スタクラ:

入社後のご様子はいかがですか?

前川 遼:

事業計画やIPO準備に欠かせない役割を担っていただいています。私たちにとって採用とは「人を増やす」ことではなく、「未来を共に描く仲間を見つける」ことです。その意味で今回のCFO採用は大きな一歩になりました。

介護の未来を変える挑戦──大切な人を守れる社会に。

スタクラ:

事業の展望についてお聞かせください。

前川 遼:

2040年をピークに、介護は人材も資源も不足し、今のままでは多くの人が必要なサービスを受けられなくなる「介護難民」の問題が再来する可能性があります。これは「社会全体の問題」であると同時に「自分の家族や自分自身の問題」でもあります。我々はその未来を変えるために事業を続けています。厚労省だけでは解決できない課題に、スタートアップとして挑みたいと思っています。

スタクラ:

採用を通じて未来にどうつなげていきたいですか?

前川 遼:

人で事業は変わります。だからこそ、一人ひとりと真摯に向き合い、共感を大切に採用しています。私たちのミッションに共鳴し、共に未来を変える意志を持った方と働きたい。スタートアップは挑戦の連続ですが、社会に不可欠な価値を生み出す手応えを感じられる場です。

【社員から一言】広報担当として見つけた挑戦の場

スタクラ:

現在はどんな業務を担当されていますか?

安藤氏:

広報を担当しています。会社のビジョンや取り組みを外に発信し、社会にどう貢献しているかを伝える役割です。スタートアップのスピード感を肌で感じつつ、社会的意義のある事業を世の中に届けるやりがいを日々実感しています。

スタクラ:

御社への入社の決め手を教えてください。

安藤氏:

もともとスタートアップで挑戦したい気持ちはありましたが、どの会社が良いのかは迷っていました。社会課題に挑む会社で働きたいと思っていたタイミングで、前川さんが私の経歴に共感し、声をかけてくださったんです。
スタクラに登録して間もなくスカウトが届いたのですが、スカウトメッセージは「私に宛てて書いてくださった」というのが伝わる内容でした。「自分の経験を理解してくれる人がいる」という安心感と、「この方と一緒に挑戦したい」という気持ちが決め手でした。結果的に、自分のスキルを活かしつつ新たな挑戦ができている今にとても満足しています。

【社員から一言】管理部門で組織を創る挑戦

スタクラ:

現在の担当業務を教えてください。

上原氏:

管理部門で労務を担当しており、IPO準備を支える役割を担っています。日々新しい学びがあり、自分のスキルを活かしながら成長できる環境です。大きな責任とやりがいを実感しています。

スタクラ:

御社への入社の決め手を教えてください。

上原氏:

スタクラに登録してすぐ、前川さんから直接スカウトをいただきました。他社を見る間もないほどスピード感のある展開でした。子どもがまだ小さいこともあり転職には慎重でしたが、それでも社会課題に真摯に挑む姿勢に心を動かされました。
介護業界は初めてでしたが、社会課題に挑む姿勢に強く惹かれ、「この会社なら社会を変える力がある」と確信しました。スタートアップというチャレンジングな環境で、自分の力を試し、未来を支える一員になりたいと思い入社を決意しました。

編集後記

 今回の取材を通じて印象的だったのは、前川さんの「人を見る」姿勢の丁寧さです。スカウトを送付する時点で1人の人として丁寧に向き合っている。採用を単なる人員補充ではなく、「未来を共に描く仲間探し」として真摯に取り組んでいる姿勢に胸を打たれました。事業を成長させるために、そして2040年の介護危機に立ち向かうために、採用は最も重要な経営判断のひとつ。人で事業が変わることを体現するような、熱量のあるお話でした。この会社と共に挑戦する人たちが、未来の介護を大きく変え、大切な人を守れる社会を作っていくのだと信じています。

この記事を書いた人

絢子小澤


小澤 絢子

上智大学卒業後、リクルートの広告代理店にて新規開拓の営業として約9年ほど勤務。 国家資格キャリアコンサルタント取得後は、個人の就職・転職の支援、キャリアプランニング、自己分析を強みとするキャリアカウンセラーとして従事してきた。これからの日本を牽引するスタートアップ支援というスタクラのビジョンに共感し、2024年10月に参画。 スタートアップへの思い:次世代を作るスタートアップが子どもたちの未来を豊かにすると信じています。志ある起業家の皆様を少しでも支えられるような存在になりたいです。

株式会社善光総合研究所

株式会社善光総合研究所
https://zenkou-lab.co.jp/

設立
2023年04月

《Mission》
ケアを必要とする全ての人々へ
その人らしく生きる ための介護を
サスティナブルに提供できる社会を実現する

《事業分野》
SaaS / 医療・ヘルスケア / シニアサービス / コンサルティング

《事業内容》
当社は、国内トップレベルの生産性を誇るケアオペレーションを構築する社会福祉法人善光会からスピンアウトしたスタートアップ企業です。
介護領域全体のオペレーションの質と効率の向上により介護サービスの持続性を守ることを目的に設立しました。福祉関連事業者や介護テクノロジーメーカーといった様々なプレーヤーの皆様と連携し、介護事業所のDX支援やスマート介護人材の育成、ケアテック企業のトータルの支援を進めています。