製油所のエンジニアが微生物スタートアップへ転職した理由

株式会社ミーバイオ 牧野 弘暉氏

「分かってたら面白くないです。分からないから面白いんです」。

大学院で微生物を研究し、大手エネルギー企業の製油所でプロセスエンジニアとして働いてきた牧野弘暉さん。2026年7月、光で微生物の代謝を切り替える技術を持つバイオスタートアップ・ミーバイオに入社した。

いまは研究開発のマネジメントから知財、採用までを担う。「どのフェーズに関わりたいか」という物差しを手に入れたことで、行きたい会社が見えてきたという。

基礎力を積んだエンジニアは、なぜゼロに近いフェーズのスタートアップを選んだのか。転職活動で何に迷い、どう決めたのか。話を聞いた。

牧野 弘暉氏


牧野 弘暉氏

大学院で微生物を研究したのち、大手エネルギー企業に入社。製油所のプロセスエンジニアとして、プラントのプロセス管理を担う。2026年7月にミーバイオへ入社し、研究開発のマネジメント、知財、採用を担当している。

株式会社ミーバイオ

株式会社ミーバイオ
https://www.mii-bio.com/

設立
2019年4月

光で細胞の代謝経路を制御する「光スイッチタンパク質」を核に、再生可能なバイオマス資源から化学製品や素材をつくるバイオものづくりに取り組むバイオテクノロジースタートアップ。

製油所のプロセスエンジニアから、バイオスタートアップへ

笑顔で語る牧野さん
笑顔で語る牧野さん

機械工学から微生物の研究へ

スタクラ:

まずはこれまでのご経歴から伺ってもいいですか?

牧野さん:

大学院の2年間、微生物の研究をしていました。そこからエネルギーや生物系に興味があって、大手エネルギー企業に入社したというところですね。入社から退職までずっと製油所で、プロセスエンジニアをしていました。製油所には装置がたくさんあるので、そのプラントのプロセス管理が役割でした。そして2026年7月に、ミーバイオに入社しています。

スタクラ:

学部は機械工学だったそうですね。微生物の研究に進んだのは、どういうきっかけだったんですか?

牧野さん:

全然違う分野ではあるんですが、小さい頃から虫や生き物が好きで。朝早くに山へコクワガタを捕りに行ったりしていました。今も生き物は大好きなんですよね。そういう、生物への根本的な興味がひとつ。もうひとつは、コストなどの課題でまだ世の中に広がりきっていないけれど、これから伸びていく分野だと思えたこと。この2点ですかね。

スタクラ:

専攻を変えることに、迷いはありませんでしたか?

牧野さん:

これまでの人生で、自分で考えて「これをやりたい」と思った方に進んだ方が、後悔もなかったし楽しかったんです。大学でも未経験で馬術部に入って、めちゃめちゃのめり込みました。そういう経験があるので、環境を変えることにあまり抵抗がないというか、慣れているのかもしれないですね。人生は短いと思っている派なので、やりたいことをやろうと。

スタクラ:

新卒で大手エネルギー企業を選んだ理由は何だったんでしょう。

牧野さん:

微生物の知見を活かせる業界を調べていくと、大きな枠組みではエネルギーにつながっていました。それともう一つ、就活の軸にしていたのが「これから変わっていく会社」です。脱炭素という大きな流れのなかで、エネルギー企業がどう変わっていくのか。その現場に関われるのは面白そうだと思いました。

スタートアップ転職を考えはじめたきっかけ

当時を振り返る牧野さん
当時を振り返る牧野さん

大学院で出会った「アントレプレナーシップ」

スタクラ:

転職を考えはじめたのは、どんなきっかけからでしたか?

牧野さん:

大学院では微生物に加えて、アントレプレナーシップ、起業家精神も学ぶ研究科にいました。そこでスタートアップやベンチャーって面白そうだと感じたのが最初ですかね。就活のときもその気持ちはあったんですが、人生設計としては、まず大企業で経験を積むのもありだと判断して。ただ働くなかでも興味は消えなくて、ずっと「やっぱり面白そうだな」というのがあって。

スタクラ:

前職の環境は、牧野さんから見てどうでしたか?

牧野さん:

本当に優秀な人ばかりで、特にエンジニアとして非常に優秀なんですよ。一緒に仕事をするなかで、自分が一番力を出せるのはどこだろう、と考えるようになり、できあがった仕組みを極めていくよりも、ゼロから形にしていく側の方が合っているのかもしれない、と。

スタクラ:

実際に動き出したのは、入社して数年たったタイミングでした。

牧野さん:

入ったからにはその仕事をやるべきですし、成長したい気持ちもあったので、最低3〜4年は必要だと考えていました。先輩や優秀な同期を見ていると、まだまだそのレベルには届いていないと思っています。ただ、エンジニアとしての基礎力はある程度培えたかな、と思えたのがそのタイミングでした。

スタクラとの出会いと、転職活動のリアル

インタビューに答える牧野さん
インタビューに答える牧野さん

AIに聞いたら、スタクラが出てきた

スタクラ:

スタクラに登録いただいたきっかけは覚えていますか?

牧野さん:

これは今っぽいやり方なんですけど、AIのチャットに自分の経歴と「微生物やエネルギー系のスタートアップに転職したい」という前提を伝えて、良いサービスを挙げてもらったらスタクラさんが出てきました。

スタクラ:

2025年ごろから、AI経由で登録してくださる方がちらほら増えているんです。ほかにはどんなサービスを使っていましたか?

牧野さん:

スタートアップ専門のサービスがあまりヒットしなくて、あとは大手の転職サイトくらいですね。ただ、創業から間もない規模の会社に出会える機会はほとんどなくて、ある程度できあがった会社のご紹介が多かった印象です。

スタクラ:

そのなかで、スタクラはどうでしたか?

牧野さん:

スタートアップを中心に扱っているサービス自体が少ないので、非常にありがたかったです。転職活動はほとんどスタクラさんと進めていました。池田さんがこまめに連絡やアドバイスをくださったのも、印象に残っています。

スタクラ:

活動中、不安に感じていたことはありましたか?

牧野さん:

一番は「決まるのかな」というところですね。最初に池田さんと話したときは、どんな会社でどうなっていきたいのか、まだ明確になっていなかったので、そのすり合わせからのスタートでした。スタートアップについての知識も足りなくて、どう探せばいいのかも分からない。数ヶ月や半年で本当に決まるのか、が一番不安でした。

スタクラ:

その不安は、どう解けていったんですか?

牧野さん:

実際に企業の方と会って話してみて、違和感があれば修正していく。それが一番早かったですね。ネットで検索しているだけだと、解像度はなかなか上がらないので。結果的に、そのやり方で良かったと思っています。

スタクラ:

途中で考え方が変わったタイミングはありましたか?

牧野さん:

早い段階でVCの方と話す機会があって、スタートアップにはフェーズがあること、そして「どのフェーズに関わりたいかは決めた方がいい」とアドバイスをもらいました。そこがきっかけです。

スタクラ:

牧野さんにとって、フェーズはなぜ大事だったんでしょう。

牧野さん:

私のイメージでは、フェーズが進んだ先にあるのが大企業なんです。後半のフェーズほど、できあがった事業を伸ばしていく働き方に近くなる。私はもともと大企業にいたので、スタートアップに挑戦するなら、ゼロから作っていく面白さを体験したかった。それなら、よりゼロに近いフェーズの方がいいと考えました。

スタクラ:

これから転職を考える方にも、参考になりそうです。

牧野さん:

そうですね。自分の行きたい方向と、入る会社のフェーズが合っているか。そこは確認しておいた方がいいと思います。

ミーバイオへの入社を決めた理由

オフィスで語る牧野さん
オフィスで語る牧野さん

微生物の研究とプラントの経験、両方が活きる場所

スタクラ:

いくつかの会社からオファーがあったなかで、ミーバイオに決めた理由は何だったんですか?

牧野さん:

大きくは2つですかね。まず、自分のバックグラウンドを活かせること。微生物をやっていましたし、ミーバイオはこれからパイロットプラントを作っていく段階なので、プロセスエンジニアとしての経験も活かせる。そこがマッチしていました。もう一つは、すでに海外展開を検討していたことです。グローバルな視点での考え方を学べそうで、面白そうだなと。

スタクラ:

入社前に、海外にも行かれたそうですね。

牧野さん:

6月にフランスに連れて行ってもらって、英語のピッチも任せてもらいました。入社の1ヶ月くらい前ですね。めちゃめちゃ楽しかったです。

スタクラ:

選考で会った方々には、どんな印象を持ちましたか?

牧野さん:

穏やかで、いろいろなことを正直に話してくださって。フランクな方たちで、一緒に仕事をしたいと思いました。

スタクラ:

ミーバイオの技術を、専門外の人にも分かるように教えてもらえますか。

牧野さん:

コア技術は、光で細胞の代謝を切り替えられる「光スイッチタンパク質」です。微生物に作らせたい有用な物質のなかには、微生物自身の増殖を妨げてしまうものがあって、大量に作るのが難しいんです。そこで、まず微生物をしっかり増やしてから、光を当てて生産に切り替える。そうやって、バイオものづくりのコストを下げることを目指しています。

スタクラ:

注目度も高まっていそうですね。

牧野さん:

経済安全保障の観点でも、関心を持っていただけるようになってきました。

入社1ヶ月、いまの仕事

仕事について語る牧野さん
仕事について語る牧野さん

研究開発のマネジメント、知財、採用を担う

スタクラ:

入社して1ヶ月ほど。実際に働いてみてどうですか?

牧野さん:

研究開発のマネジメントと知財、採用を担当しています。面接で伺っていた内容を、いま実際に手を動かしながら「こういうことか」と掴みはじめているところですね。想像と違って戸惑っている、ということは全くなくて、楽しくやらせてもらっています。

スタクラ:

見えていない部分があるなかで決断することに、不安はなかったですか?

牧野さん:

分かってたら面白くないです。分からないから面白いんです。

スタクラ:

知財は初めての領域ですよね。

牧野さん:

初めてです。今は顧問の弁理士さんに相談しながら、進行役に徹しています。ゆくゆくは自分でも勉強して、「こうしてみてはどうですか」と提案できるところまで持っていきたいですね。

スタクラ:

これからの目標を聞かせてください。

牧野さん:

一番の目標は、ミーバイオを大きくすることです。まずは自分が担当している研究開発のマネジメント、知財、採用を全力でやって、会社に貢献したいと思っています。

スタートアップ転職に迷っている人へ

読者に語りかける牧野さん
読者に語りかける牧野さん
スタクラ:

最後に、スタートアップへの転職を迷っている方へメッセージをお願いします。

牧野さん:

悩んでいる理由は人それぞれなので、一概には言えないんですが、少しでも興味があるなら、その時点で向いているんじゃないかなと個人的には思います。あとは、エージェントでもスタートアップの方でもいいので、実際に会って話して、解像度を上げていくのがおすすめです。今はオンラインでも会いやすくなっていますし。

スタクラ:

選んだ先でうまくいかなかったら、という不安についてはどうでしょう。

牧野さん:

その不安は、そこまでいらないと思っていて。「あっちにすればよかったかな」と考えるより、自分の選んだ方を正解にする。それくらいの気持ちでいられれば、決断に迷うことは少なくなるのかなと思います。

ミーバイオのオフィスにて
ミーバイオのオフィスにて

スタートアップ転職を考えはじめた方へ

牧野さんのように、ゼロから形にしていく面白さを味わいたいと考えている方へ。スタクラでは、社会課題の解決に挑み、独自審査を通過したスタートアップの求人を掲載しています。

株式会社ミーバイオ

株式会社ミーバイオ
https://www.mii-bio.com/

設立
2019年4月

光で細胞の代謝経路を制御する「光スイッチタンパク質」を核に、再生可能なバイオマス資源から化学製品や素材をつくるバイオものづくりに取り組むバイオテクノロジースタートアップ。

この記事を書いた人

スタクラ編集部

スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。