日本のモノづくりを世界一に——AIで製造業の未来を切り拓く

匠技研工業株式会社代表取締役社長 前田 将太氏

父も祖父も弁護士。自分自身も弁護士になるものだと思っていた——。
そんなキャリアを歩むはずだった前田将太氏は、東京大学法科大学院在学中に起業の道を選びました。

現在は匠技研工業株式会社の代表取締役社長として、製造業向けAI基幹システム「匠フォース」を展開。
日本の製造業が抱える経営課題の解決に挑んでいます。

幼少期からモノづくりに夢中だった少年は、なぜ起業家になったのか。そしてなぜ製造業を選んだのか。

今回は前田氏に、生い立ちから創業の背景、そしてAI時代に描く未来について伺いました。

 

前田 将太氏

代表取締役社長
前田 将太氏

東京大学法学部卒業。東京大学運動会ラクロス部男子OB。 家庭の影響で幼少期から弁護士を志す中、社会課題の解決手段としてのスタートアップの魅力に惹かれ、起業の道を進むことを決意。 創業後、製造業の皆さま方との数々のご縁を頂く中で、モノづくりの奥深さと課題の深刻さに直面し、製造業向けAI基幹システム『匠フォース』事業を立ち上げた。

匠技研工業株式会社

匠技研工業株式会社
https://takumi-giken.co.jp/

設立
2020年02月

工作機械は24時間稼働を目指して進化し続けているのに、それを動かす工場管理業務——原価管理・見積・受注・設計・生産計画・調達・検査——は、いまだ人手と紙とExcel、ベテランの暗黙知に依存しています。

設備がどれだけ高速化しても、管理業務が人手で滞れば工場全体のスループットはそこで頭打ちになる。

この“工場管理業務こそが、工場全体のボトルネック”だと私たちは考えています。

主力プロダクト「匠フォース」は、このボトルネックをAIによる自動化で解消します。

起点は「見積」。
見積は単なる事務作業ではなく、原価・値付け・製造ナレッジが交差する製造業の経営判断そのものです。
ここに入り込むことで、外部からは決して取得できないVerticalなデータが蓄積され、それを基盤に原価〜見積〜受注〜製造までを一気通貫で動かすOSへと進化していきます。

弁護士一家で育った“モノづくり好き”の少年時代

スタクラ:

まずは幼少期のお話から伺わせてください。どのようなお子さんだったのでしょうか。

匠技研工業株式会社 前田 将太氏(以下敬称略):

東京の墨田区で生まれました。父も祖父も弁護士で、妹も弁護士になっています。周囲から見れば、自分も弁護士になるのが自然な環境でしたね。

ただ、子どもの頃から興味があったのは法律よりも、モノづくりや科学でした。

夏休みには自由研究に夢中になり、海の生き物を観察したり、ロボットを組み立ててプログラミングをしたりしていました。

スタクラ:

かなり理系的な少年時代だったんですね。

前田 将太:

そうですね。

あと、中学・高校では野球に打ち込んでいました。勉強ももちろんしていましたが、どちらかというと体を動かすことが好きなタイプでした。

法科大学院で出会った「起業」という選択肢

スタクラ:

弁護士ではなく起業を選ばれたのはなぜだったのでしょうか。

前田 将太:

大学までは起業なんて考えたこともありませんでした。

正直、大学では勉強よりもラクロスに打ち込んでいましたし、

父も祖父も弁護士で、自分自身も法学部から法科大学院へ進学していたので、周囲から見れば弁護士になるのが自然な進路だったと思います。

転機になったのは東京大学大学院(法科大学院)に進学したタイミングです。

ラクロス部を引退して時間ができたこともあり、「アントレプレナー道場」という起業家育成プログラムに同じラクロス部だった共同創業者の井坂と原と一緒に参加しました。

そこで初めてスタートアップという世界を知ったんです。

社会課題を解決しながら、ものすごいスピードで事業を成長させる人たちがいる。
その姿に私たちは衝撃を受けました。

特に印象に残っているのは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)の解消に挑戦しているアストロスケールの岡田さんの話でした。

最初は「そんなことが本当にビジネスになるのか」と思いました。でも、人類規模の課題に本気で向き合っている姿が格好良くて。

自分たちも挑戦してみたいと思うようになりました。

何度ものピボットの先に見つけた使命と新社名に込めた想い

スタクラ:

最初から製造業だったわけではないんですよね。

前田 将太:

全然違いましたね。

東大生向けSNS、観光VRアプリ、自治体向け動画制作、プログラミング教室、コロナ禍での飲食店向けランチサブスクリプションなど色々な事業を立ち上げては撤退しました。

ランチサブスクは30店舗・数百人のお客さんがついたりと一定の価値は生み出していましたが、「これが自分たちが人生をかけて挑むべき課題なのか?」と言われると、どこか違和感があったんです。

スタクラ:

そこから製造業に行き着いた理由は何だったのでしょうか。

前田 将太:

実は製造業以外にも不動産や建設、保険など、さまざまな業界を見ていました。
その中で製造業の現場に訪れたとき、 「課題だらけじゃないか!」と感じたんです。
FAXや電話、Excel中心の業務が残り、多くの企業が同じ悩みを抱えていたんです。 

それまで見てきた事業とは違い、「この人たちの課題を解かなければ」という感覚が自然と湧いてきました。

見積から始めたのは、製造業の見積が「経営に直結する業務」だからです。
多くの企業で、見積(値決め)は社長がやっていることが多く、業績に直結する重要な業務です。

また見積業務は、従来の生産管理システムなどがカバーできていない領域であり、ホワイトスペースとして残っていました。

スタクラ:

2023年には社名も「LeadX」から「匠技研工業」へ変更されていますが、そこにも何か理由があったのでしょうか。

前田 将太:

大きな理由は、自分たちがどんな会社なのかを社名で表現したかったからです。

もともとの「LeadX」は、いかにもITベンチャーらしい名前でした。
ただ、製造業の現場に向き合う中で、自分たちが本当に取り組みたいテーマが明確になっていきました。

それは、日本のモノづくりを支えてきた職人の技術や経験知を未来へ残すことです。
製造業では、熟練工の引退や人手不足によって、長年培われた技術が失われつつあります。

だからこそ私たちは、その技術を後世に残すための研究を惜しまず、ソフトウェアやテクノロジーの力で製造業の発展に貢献したいと考えています。

「匠技研工業」という社名には、“匠の技術を研究し、工業の世界に貢献する”という想いを込めました。

実は「技研工業」という名称は、私が尊敬する本田宗一郎氏が創業した本田技研工業から着想を得ています。

本田宗一郎氏のように、自分たちが信じるビジョンを追求し、困難から逃げずに向き合い続けたい。

そんな決意も、この社名には込められています。

AIで日本のモノづくりを世界一へ

スタクラ:

今後どのような未来を実現したいと考えていますか。

前田 将太:

私たちは製造業を、AIで大きくアップデートしていきたいと思っています。日本の製造業の強さは現場にあります。

一方で、その強さの多くは暗黙知です。
ベテランが引退すると失われてしまう知識も少なくありません。
だからこそAIを活用して、その知識を継承できる世界を作りたい。そして最終的には、日本発で世界に通用する製造業のOSを作りたいと思っています。

今はAIによって大きな変化が起きています。
かつてDXの遅れが指摘されていた日本の製造業ですが、過去の延長線上ではなく、業界全体がもう一度スタートラインに立っているような感覚があります。
だからこそ面白いんです。

日本の現場が持つ職人の技術や暗黙知をAIを活用しながら資産化できれば、日本のモノづくりが世界の製造業を牽引できる。

今はそのチャンスがあると、本気で信じています。

スタクラ:

社内でもAIネイティブな変革を進めているとのことですが。

前田 将太:

はい。私自らがオーナーとなって、AI活用を社内で進めています。
「特定の誰かがAIを使いこなす」ではなく、全員がAI前提の
世界線で業務をゼロから作り直す——それが目指す姿です。

今進めているのが社内OSの刷新です。
事業戦略や商談ノウハウ、業務ルールなど、これまで個人の中にあった知識や判断基準を組織の資産として蓄積し、AIが活用できる形に変えていこうとしています。

AIの基盤モデルそのものは、誰もが平等にアクセスできる状態になります。その中で企業ごとの差になるのは、自社ならではの知識や文脈をどれだけ蓄積し、AIが活用できる状態を構築できているかどうかです。

だからこそ、誰よりも早くこのOSを作り上げた企業が勝ち続けられると確信しています。

スタクラ:

AI活用が進む中で、人に求められる役割も変わりそうですね。

前田 将太:

そうですね。でも、AIで業務効率が50%向上したからといって、人を半分にするという発想ではありません。
人が2倍になり、生産性が2倍になれば、4倍付加価値を生み出せるようになるイメージです。

AIは人を置き換えるものではなく、あくまでブースターです。だから最後は人にしかできないことが残り続けるし、その可能性をどこまで広げられるかが大事だと思っています。

スキルよりも素直さを持つ挑戦者

スタクラ:

どのような方と一緒に働きたいですか。

前田 将太:

私たちが最も重視しているのはマインドセットです。

スキルが高くても、学ぶ姿勢がなければ採用しません。逆に、今できなくても学び続けられる人は成長できると考えています。

スタクラ:

特に重視するポイントはありますか?

前田 将太:

「素直さ」ですかね。
例えば、うまくいかなかった話や辛かったエピソードから 、悔しかった経験を原動力に、そこから何を学んだか、どう成長できたかを重視しています。

AI時代は「知識の量」より「AIをいかに賢く使いこなすか」が差を生みます。
素直で爆速なラーニング力こそが最大の競争力になる時代。

若くても成長を止めている人は勿体無いと思いますし、40~50代でもどんどん吸収できる人とは一緒に仕事をしたいと思います。

スタートアップへの挑戦を考えている方へ

スタクラ:

最後に読者へメッセージをお願いします。

前田 将太:

AIによって働き方もキャリアも大きく変わる時代になっています。だからこそ、スクラップ&ビルドで自分自身も変化し続ける必要があります。

私たち自身も挑戦者です。

製造業という「本物の困りごとがある現場」で、AI時代の最前線に立てる環境がここにあります。

「日本のモノづくりを世界一にしたい」「大きな社会課題の解決に挑みたい」と思う方がいれば、ぜひ一度お話ししましょう。

一緒に明るい日本の未来を創っていけたら嬉しいです。

この記事を書いた人

スタクラ編集部


スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

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設立
2020年02月

工作機械は24時間稼働を目指して進化し続けているのに、それを動かす工場管理業務——原価管理・見積・受注・設計・生産計画・調達・検査——は、いまだ人手と紙とExcel、ベテランの暗黙知に依存しています。

設備がどれだけ高速化しても、管理業務が人手で滞れば工場全体のスループットはそこで頭打ちになる。

この“工場管理業務こそが、工場全体のボトルネック”だと私たちは考えています。

主力プロダクト「匠フォース」は、このボトルネックをAIによる自動化で解消します。

起点は「見積」。
見積は単なる事務作業ではなく、原価・値付け・製造ナレッジが交差する製造業の経営判断そのものです。
ここに入り込むことで、外部からは決して取得できないVerticalなデータが蓄積され、それを基盤に原価〜見積〜受注〜製造までを一気通貫で動かすOSへと進化していきます。