“勇者パーティー”を編成せよ!女性CEO×地方発スタートアップの採用戦略とは?

株式会社ベホマル代表取締役 西原 麻友子氏

ディープテック領域、滋賀という地方、そして女性起業家——いくつもの“挑戦のハードル”を軽やかに飛び越え、独自のスタイルで組織づくりを進めるベホマル代表・西原さん。未整備な領域だからこそ、一緒につくる面白さがある。そんな前向きな空気に満ちた、採用と組織のリアルを伺いました。

 

西原 麻友子氏

代表取締役
西原 麻友子氏

奈良先端科学技術大学院大学・物質創成科学研究科を修了し、同年、株式会社村田製作所に入社。 新規事業を考える中、自分の能力不足に悩み、仕事をしながら夜間勉強できる事業構想大学院大学に2022年4月に入学。熱意あふれる院生や教員たちから多くの刺激を受け、社内新規事業ではなく起業を決意。同年10月に退職し、11月に株式会社ベホマルを創業。

株式会社ベホマル

株式会社ベホマル
https://www.behomal.co.jp/

設立
2022年11月

<MISSION>
日常をCO₂回収スポットに

<事業内容>
株式会社ベホマルは、CO₂を吸収するバイオマス由来素材「美環(Binowa)®」を開発するスタートアップです。プラスチックやインクに混ぜることで製品自体がCO₂を吸収・固定でき、幅広い分野での応用を目指しています。企業や自治体と連携しながら、社会実装と量産化に取り組んでいます。

スタートアップという選択肢を、地方から

スタクラ:

まずは現在の事業と組織の状況について教えてください。

西原 麻友子:

私たちは滋賀県発のディープテックスタートアップで、植物由来のCO₂吸収材『美環(Binowa)』を開発しています。プラスチックに加えるだけでCO₂を吸収できる新素材を提供し、日常の中で環境貢献ができる社会を目指しています。

まだシード期にあたる段階で、社員数は役員含め5名、業務委託を含めると約9名の体制です。研究開発と営業の基盤を固めつつ、ようやく組織らしさが出てきたところです。

スタクラ:

起業のきっかけはどのようなものでしたか?

西原 麻友子:

15年間、大企業で新規事業や材料開発などに携わってきました。そこで得た知見を活かして、今度は自分の手で事業をつくってみたいと思ったんです。とはいえ、ものすごく重たい決断というより、「やってみたいからやる」くらいの感覚でした。失敗したらまた転職すればいい。起業することも、転職の延長線のようなものでしたね。

スタクラ導入の決め手は「地域に眠る可能性」への仮説

スタクラ:

採用に関して、どんな課題があったのでしょうか?

西原 麻友子:

スタートアップという選択肢自体が、滋賀のような地方にはまだ少ないのが現状です。でも、滋賀には製造業が多く、技術的なバックグラウンドを持った人も多い。もしかしたら、その中に少数でもスタートアップで働きたいと思っている人がいるのではないか——そんな仮説を持っていました。

スタクラ:

スタクラを選んだ理由は?

西原 麻友子:

成功報酬型ではない価格体系や、スタートアップ志向の方とのマッチングが見込めた点です。実際、地方にもかかわらず想像以上のエントリーがありましたし、スタートアップへの関心は確かに存在していると実感できました。実際はスカウトを送付したのは8件、求人オープン直後に20名の方から応募をいただき驚きました。実質3カ月くらいですが、業務委託の事業企画3名、正社員のコーポレート1名、合計4名が採用できました。すでにご活躍いただいております!

スタクラ:

素晴らしいです…!今回、シニア採用にも積極的でしたね。

西原 麻友子:

そうですね。関西は製造業が多く、経験豊富なシニア層がたくさんいます。若い人材はどうしてもSaaSやITに流れていきますが、製造業の現場ならシニア層がこれまで培ってきた経験が大きな武器になります。加えて、マネジメント経験が豊富でチームを落ち着かせてくれる存在でもある。年齢ではなく、スキルやマインドで見れば十分に戦力になるんです。今回は40代、50代の方もとっても優秀な方が採用できました。

採用で重視するのは「対話と感覚」

スタクラ:

採用時に工夫されていたことがあれば教えてください。

西原 麻友子:

選考はすべて私自身が担当するのが今の組織構成。予め候補者の経歴をしっかり読み込んで、「この経験はうちの◎◎に活かせそう」など、質問や確認すべきことを想定して臨んでいます。そのうえで、「30分間の面談で話が自然に盛り上がるかどうか」を大切にしています。一緒に働くには、テンポや空気感が合うかどうかがすごく重要だと思っています。

スタクラ:

スカウト文面も工夫していただいていましたね。

西原 麻友子:

そうですね、テンプレートは使わず、一人ひとりの経歴や志向に合わせて、ちゃんと向き合って書くようにしています。ご面談後は感想と共に御礼のメッセージを当日中に入れていましたね。勤務地が地方ということもあり、スカウトの量にこだわるのではなく、応募してくださる方とのマッチ度を高めたいと考えていました。「温かいメッセージだった」と言ってもらえるのはとても嬉しいです。

“勇者パーティー”のつくり方

スタクラ:

組織づくりで意識されていることは?

西原 麻友子:

自分が出来ないこと、わからないことは頼まない、というのがモットーです。そのうえで、法律上間違えると大変なことや、私自身がするよりも専門家に任せた方が確実なことから外部の人に任せるようにしてきました。たとえば最初に入ってもらったのは財務のアドバイザーです。そこから少しずつ、自分が対応できる範囲の業務も信頼できる人に引き継いで、組織として倍々に強くなっていくイメージです。

スタクラ:

なるほど、“勇者パーティー”というのは?

西原 麻友子:

私自身ゲームが大好きで!社名の由来も、RPGゲームの回復魔法「ベホマ」に、マル=円(縁)・地球・循環・人の輪”を掛け合わせたものなんです。環境問題という巨大な敵に立ち向かうには、勇者(仲間)たちの力を合わせることが不可欠です。

全員がオールマイティーである必要はなく、それぞれが得意なことを持ち寄って補い合えばいいと思っています。むしろ、特定のスキルに特化していたり、ちょっと変わった個性があるくらいが面白い。多様な個性の集合体が、強いチームをつくると信じています。さらに言えば、勇者パーティーというのはベホマル社員だけではありません。支援してくれる人、一緒に開発・販売する企業の人、ベホマル製品を使う人など、全てです。つまるところステークホルダー=勇者パーティーなんです。

組織は「規模」より「目的」からつくる

スタクラ:

今後の組織づくりについて教えてください。

西原 麻友子:

人数を増やすこと自体を目的にするつもりはありません。ビジョンを実現するために必要な機能を持った組織をつくる。それがたとえば10人で達成できるなら、その方が一人ひとりの取り分も大きくていいですよね。少数精鋭でも、使命感とやりがいを持って働けるチームが理想です。

スタクラ:

福利厚生のアイデアもユニークですね。

西原 麻友子:

推し活休暇」をつくりたいと思っていて、たとえばゲームの発売日や推しのコンサートには休んでいいとか(笑)。休みを取りやすくするには、まず代表である私自身が率先して取らないと、みんなが気を遣ってしまいますからね。自分自身の生活や家庭、好きなことも大事にしながら働いてほしいと思うんです。短時間で集中して働き、効率良く成果をあげてもらえるのがベストだと考えています。

採用の難しさと向き合いながら、一緒に前へ進む

スタクラ:

採用の難しさについても感じるところはありますか?

西原 麻友子:

ありますね。ぜひとも採用したい!と感じた方でも、今の年収を提示できない場合は本当に悩みます。でも、そういう時は正直に「今はこれだけしか出せません」とお伝えしつつ、「私自身もこの金額でやってます」と、自分の報酬も明かします。その上で、「一緒にこのビジョンを実現して、年収も上げていきましょう」と巻き込んでいくようにしています。

スタクラ:

誠実な姿勢が伝わります…!

西原 麻友子:

スタートアップって、ビジョンに共感してくれるかが何より大事です。大手企業ほど資金が潤沢でなくても、面白さや挑戦の価値を伝えることで、共に歩んでくれる仲間が増えてきたのはとても嬉しいことですね。

フラットな社会へ。挑戦を後押しする存在に

スタクラ:

スタクラの支援はいかがでしたか?

西原 麻友子:

初めての本格採用活動でしたが、どういう案内文章や返信をしたらいいか、など丁寧に教えていただけました。何より、出入りがあって当たり前のスタートアップ業界において、成果報酬型でない採用活動は逆にじっくり腰を据えて出来ましたし、とても合うと感じました。もし要望をお伝えするとしたら、もっと地方でも広告宣伝活動してもらって、東京一極集中になっている状況を打破して、眠れる人材を発掘してほしいと思っています。

スタクラ:

なるほど、貴重なご意見をありがとうございます!最後に、これからスタートアップで働きたいと考える方へのメッセージをお願いします。

西原 麻友子:

日本だけでも何百万社以上企業があります。自分に合う場所はきっとどこかにある。もし今の職場でモヤモヤしているなら、飛び出してみてもいいと思います。性別も年齢も経験も関係なく、いつでも何にでも挑戦していい。私も現在、中学生の子育て中ですが、40代になってから起業しました。もっともっと子育て中の女性も、働き方の選択肢を広げてチャレンジできる社会になるといいなと思っています。シニア層にもめちゃくちゃ優秀な方がいますし、年齢で限界を決める必要も全くありません。

スタクラ:

ありがとうございました。西原さんの自然体な語り口と、起業家としての力強さが印象的でした!どんな勇者パーティーができるのか、これからがとても楽しみですね。

編集後記(スタクラ担当者より)

「地方でも、女性でも、制限があっても、軽やかに挑戦していい」。西原さんとお話をしていて何度も感じたのは、そんな前向きで自由なスタンスの美しさでした。スタートアップというと「整っていない」「大変そう」というイメージがあるかもしれません。でも、西原さんはその“整っていない”部分こそ、「一緒につくっていける」面白さだと教えてくださいました。

そして何より印象的だったのは、その前向きな言葉の数々を、笑顔でさらっと伝える自然体な姿。大きなビジョンを語りながらも、どこか親しみやすくて、ふと「この人と一緒に働きたいな」と思わせる力がある。そんなお人柄と空気感が、今のベホマルの組織づくりを形作っているのだと感じました。

きっとこれからも、“勇者パーティー”には、自然と仲間が集まってくるのでしょう。

この記事を書いた人

スタクラ編集部


スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

株式会社ベホマル

株式会社ベホマル
https://www.behomal.co.jp/

設立
2022年11月

<MISSION>
日常をCO₂回収スポットに

<事業内容>
株式会社ベホマルは、CO₂を吸収するバイオマス由来素材「美環(Binowa)®」を開発するスタートアップです。プラスチックやインクに混ぜることで製品自体がCO₂を吸収・固定でき、幅広い分野での応用を目指しています。企業や自治体と連携しながら、社会実装と量産化に取り組んでいます。