#9.自分に合うスタートアップはどのフェーズ?

スタートアップ転職の仕方について、全24回の連載です。
自身のキャリアの考え方のヒントや、スタートアップへの挑戦の後押しに、ぜひご覧ください!

はじめに:スタートアップにも「成長段階」がある

スタートアップに転職すると決めたとき、多くの人がまず探し始めるのは「どんな会社か」「どんな事業か」といった“木”の部分。けれど、本当に大切なのはまず“森”を見ること──つまり、その企業がどの「フェーズ」にいるのかを理解することです。

スタートアップのフェーズは、会社の体力やスピード感、組織構造、そして求められる人材像に直結しています。自分のスキルや目的とミスマッチなフェーズを選んでしまえば、せっかくの挑戦も後悔につながりかねません。

スタートアップの4つのフェーズとは?

スタートアップは成長に応じて、大きく4つのフェーズに分かれます。

● シード/アーリー期:「0→1」を創る

・まだ何も形ができていない、創業直後のフェーズ
・社員は20人以下、給与も控えめ(その分ストックオプションのチャンスあり)
・キーワードは「ゼロから作る」「手を動かす」「なんでもやる」

このフェーズでは、指示待ちでは動けないことが前提。圧倒的な自走力と、変化を楽しめる柔軟性が求められます。逆に、「正解がある仕事がしたい」「計画に沿って進めたい」タイプの人には厳しい環境です。

● ミドル期:「1→10」に育てる

・シリーズA前後、プロダクトやサービスが形になり、売り始める段階
・社員規模は〜50人程度
・組織づくりや売上拡大がミッション

シード期よりも少し仕組みができてきて、仕組みとカオスの狭間にいるフェーズ。現場の泥臭さと経営目線、どちらにもバランスよく関われる人材が活躍します。

● レーター期:「10→100」に拡大する

・プロダクトが市場にフィットし始め、スケール段階に入る
・社員規模は51〜150人前後
・部署や役割が整理され、再現性を持って拡大を図る

この段階では、事業を安定的に伸ばすためのオペレーションやマネジメントスキルが重宝されます。「ゼロイチ」よりも、「既存のやり方を磨いて広げる」ことが得意な人に向いています。

● グロース期:経営を確立する

・IPO直前・直後など、組織として一人前の会社へ
・社員数は150人超え、給与水準も高い
・経営と事業の両輪を安定的に回す段階

大企業からの転職でもソフトランディングしやすいのがこのフェーズ。組織の歯車の一つになる感覚は否めませんが、より安定的な環境でチャレンジしたい人には選択肢になります。

自分のスキルは、どのフェーズで活きる?

スタートアップでは「何ができるか」だけでなく、“どのフェーズでそのスキルが価値を発揮できるか”が問われます。

3つの視点で、あなたの経験を振り返ってみましょう。

スキルの種類解決してきたこと向いているフェーズ
A:「経営のWHY」何を目指すのか、なぜそれをやるのかシード/アーリー期、自ら起業
B:「経営のWHAT」どんな事業をやるべきか、何を提供するのかミドル期
C:「事業のHOW」どう実行するか、どう改善するかレーター期、グロース期

あなたが解決してきた課題は「WHY」なのか「WHAT」なのか「HOW」なのか?
その視点から、自分の活躍できるステージが見えてきます。

企業フェーズごとに“前提条件”とリスクは異なる

自分のスキルや価値観と合っていないフェーズのスタートアップに入ってしまうと、
入社後に想像以上のギャップに悩むことにもなりかねません。

以下に、フェーズ別の代表的なリスク例を挙げてみます。

シード/アーリー期
事業もチームも立ち上げ段階のため、資金ショートによる突然の倒産や、短期間での契約終了といった厳しい現実が待っていることも。
人を育てる余裕がないため、「自走力」がなければ続きません。

ミドル期
組織の拡大と整備の狭間にあるため、カルチャーの揺れやミスマッチによる退職も少なくありません。
また、IPOを目指している企業では、外部環境によって上場計画が延期・中止になるケースも。

レーター期/グロース期
組織がある程度成熟している一方で、「思ったより仕事に裁量がない」「自分の成長余地が小さい」と感じてしまうことも。
また、成長が鈍化している企業では、ポジション不足や停滞感を抱くこともあります。

フェーズの理解が甘いと、せっかくの経歴やスキルも活かせず、挫折感を味わうことになりかねません。

たとえば、以下のような事例があります:

 MBA取得者や大企業出身者が、スキルの過信から「シード期」の会社に入社。
 指示がないことに戸惑い、結果を出せず短期間で退職。

経歴がどれだけ立派でも、フェーズが合わなければ活躍は難しい。
逆に、適切なフェーズを選べば、自分の強みが何倍にも活かせるのです。

おわりに:自分にとっての“ちょうどいいスタートアップ”を見つけよう

スタートアップ選びは、「どんな会社か」だけでなく、「いまどのフェーズにいるか」を見ることが大切です。

フェーズは、求められるスキル・カルチャー・リスク許容度すべてを決める要素。だからこそ、転職目的と照らし合わせて、冷静に判断する視点が必要です。


「自分に合うフェーズのスタートアップは見えてきたけれど、もっと経営に深く関わるにはどうすれば?」と感じた方へ。次回は、スタートアップでCxO(経営幹部)になるためのリアルな道筋を解説します。

勢いだけで目指すのは危険。でも、目指すべき人にはチャンスもある──そんなCxOの「なり方」について、具体的な5つのルートをご紹介します。

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この記事を書いた人

佐藤 鮎美


佐藤 鮎美

【所属】株式会社スタートアップクラス マーケティング部 【経歴】大学卒業後、リクルート広告代理店に入社。その後、(株)リクルートホールディングスにてバックオフィス業務全般を行い、(株)ジュリスティックスでは人材紹介を含むアシスタント業務を行う。2022年4月よりスタートアップクラスへ参画。 【スタートアップへの思い】 志をもった素晴らしいスタートアップがあることを知ってもらい、良い出会いからスタートアップの事業成長に繋がれば嬉しいです!