#7.「染み出し」の3つの切り口

スタートアップ転職の仕方について、全24回の連載です。
自身のキャリアの考え方のヒントや、スタートアップへの挑戦の後押しに、ぜひご覧ください!

染み出しとは、自分の経験を活かす戦略

スタートアップ転職において、「未経験だから無理」と自分で線を引いてしまう人が多いのが現実です。
しかし、“染み出し”という考え方は、その思い込みを覆してくれます。

染み出しとは、いまのスキルや経験を「にじませる」ように職種や業種をスライドしていくキャリア戦略です。
ゼロからの挑戦ではなく、自分の“できること”を起点にしたキャリアシフト。だからこそ、地に足のついたスタートアップ転職が実現できるのです。

今回は、その「染み出し」を成功させる3つの切り口を紹介します。

切り口①:成果を出せるスキルを活用する

1つ目の切り口は、いまの仕事で成果を出してきたスキルを軸にする方法です。

たとえば──

・営業職で成果を出してきたなら、顧客との信頼構築スキルを軸に、カスタマーサクセス事業開発に染み出す
・編集職で企画・構成に強みがあるなら、言語化力や構造化力を軸に、広報採用ブランディングに染み出す
・人事で制度設計に携わってきたなら、業務設計スキルを軸に、HR系SaaSの導入支援などに染み出す

ここで重要なのは、「職種名」ではなく「成果を出せた経験」から染み出すという発想です。

スキルは、業界や職種に閉じたものではありません。
それをどんな形で、どんな場面で使っていたのかを言語化できれば、異なるフィールドにも“にじませる”ことができるのです。

切り口②:これまでに経験してきた業種を活用する

2つ目の切り口は、自分がこれまで属してきた業種やドメイン知識を活かすという考え方です。

たとえば──

・広告代理店にいた人なら、マーケティング支援SaaS企業への転職
・教育業界にいた人なら、EdTechスタートアップへの転職
・金融業界出身の人なら、FinTech系プロダクトのCSや事業企画など

その業界に特有のルール、商習慣、意思決定の流れ、プレイヤー構造──
そういった“身体感覚として染み込んだ知識”は、スタートアップにとって非常に価値のある資産です。

特に、スタートアップがレガシー産業に挑む際には、業界出身者の視点が不可欠です。

「こんな古い業界の知識は役に立たない」と思っていたことが、スタートアップにとっては“喉から手が出るほどほしい情報”であることも少なくありません。

切り口③:親しんできたビジネスモデルやツールを活用する

3つ目の切り口は、自分が“触れてきたプロダクトや仕組み”から染み出すというアプローチです。

たとえば──

・普段からSaaS系のツールを使っているなら、そのユーザー目線を活かして、プロダクト改善に関わる
・店舗運営経験があるなら、その現場知見を活かして、飲食・小売向けSaaSの導入支援を担う
・メディア編集の仕事でCMSを触っていたなら、ノーコードSaaSのカスタマーサポートやCSへ

ここでのポイントは、「スキル」として言語化されていないけれど、実は深く理解しているビジネス構造やツールの使い方があるということ。

自分にとっては「当たり前」であっても、スタートアップにとっては「リアルなユーザー目線を持ったプロフェッショナル」として大きな価値があります。

自分が“触れてきた世界”をひもとけば、そこには必ず染み出せる種がある。
それを見つけることで、これまで気づいていなかったキャリアの入り口が見えてくるのです。

「未経験」を戦略的に超える思考

スタートアップ転職は、“完全未経験者”を採用することは少なく、多くの場合、何らかの「染み出し」が前提になります。

つまり、染み出せる要素があるかぎり、あなたは“未経験”ではないのです。

ここまで紹介してきた3つの切り口──

・成果を出せるスキル
・経験してきた業種
・親しんできたツールやビジネスモデル

これらを丁寧に棚卸し、自分にしかできないキャリアの“にじませ方”を設計していくことが、スタートアップ転職の第一歩になります。

おわりに:「できること」から「やりたいこと」へ

キャリアは「やりたいこと」を軸に考えることも大切ですが、実際の転職では「できること」から入って、「やりたいこと」へと染み出していくルートが、結果として近道になることも多いのです。

だからこそ、自分のスキルや経験を“今この瞬間”の解像度で棚卸ししてみてください。

そして、それらがどう染み出せそうか、どんな企業でならその力が活きそうか──
そんな風に転職をデザインすることで、あなたらしいスタートアップへの第一歩が動き出すはずです。


次回からはいよいよ、スタートアップの選び方にフォーカスしていきます。

次回は、スタートアップ選びの「3つの条件」にフォーカスを当てていきます。
名前や知名度ではなく、“相性”や“共感”から会社を選ぶための視点を、一緒に整理していきましょう。

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この記事を書いた人

スタクラ編集部


スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。