研究者の育成と起業を促し、世界に変革をもたらし続ける

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)外部連携部門 スタートアップ支援室 エンジニア(主任相当職) 藤崎 百合恵氏

物質と材料に特化した研究所として、物質・材料研究機構(NIMS)は活動しています。「材料で、世界を変える」というスローガンのもと、基礎研究の推進を始めとして、研究成果の提供や共同研究、次代の研究者育成まで、マテリアル分野の課題に幅広く取り組んでいるのがNIMSという研究所です。

NIMSのミッションは、研究や育成に留まりません。研究所で得られた成果を社会実装するために、研究者のスタートアップ起業サポートにも力を入れています。特に、2024年7月に新設されたスタートアップ支援室では、これまでNIMSが培ってきた起業ノウハウを生かして、新たなNIMS発スタートアップの誕生を後押ししています。

スタートアップ支援室にエンジニアとして関わっている藤崎百合恵氏は、2017年からNIMSに参画し、知財創出や研究連携での研究者サポートや、研究成果を企業にアピールして社会実装につなげるイベントの企画など、研究者と企業の橋渡し役として長く活動してきました。

今回は、そんな藤崎氏に新しくできたスタートアップ支援室のミッションや、NIMS発スタートアップの特徴や働く魅力について、詳しくお話を伺いました。

藤崎 百合恵氏

外部連携部門 スタートアップ支援室 エンジニア(主任相当職)
藤崎 百合恵氏

総合電機メーカーでの前職を経て、NIMSに参画。企業と研究者の架け橋となり、知財創出又は研究連携に係る各種契約・渉外や研究成果PR等の業務に従事する。スタートアップ支援室に異動後は、特にベンチャーとこれを起業する研究者へのサポートに注力している。契約・特許・渉外などの業務経験を活かしつつ、研究者の起業とベンチャーの事業展開の中で発生する様々な事案に対して、最適なサポートとソリューションを提供するために精力的に活動中。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
https://www.nims.go.jp/index.html

NIMS(ニムス)は、国内で唯一、物質・材料科学の研究に特化した国立研究開発法人です。
世界を構成する様々な「物質」。その中で私たちの生活を支えているのが「材料」です。その材料も、大きくは有機・高分子材料、無機材料に分類でき、無機材料はさらに金属材料とセラミックス材料とに分けられます。
石器時代から産業革命を経て現代まで、人類の発展はこの材料の進歩とともにありましたが、近年では、地球規模の環境や資源問題の解決手段のひとつとしても注目が高まっています。NIMSはその物質・材料に関する研究に特化した国立研究開発法人として、「明日を創る材料研究」をテーマに、未来を拓く物質・材料の研究に日々取り組んでいます。
*NIMS公式HPより引用

国内唯一の物質・材料特化研究所として、NIMSが果たすべき役割

スタクラ:

最初に、NIMSの創立背景とビジョンについて教えてください。

NIMS スタートアップ支援室 藤崎 百合恵氏(以下敬称略):

NIMSが「物質・材料研究機構」というかたちで成立する前には、金属材料技術研究所と無機材質研究所という二つの研究所がありました。それらが2001年に統合され、独立行政法人としてNIMSが誕生しました。

その後、2015年に独立行政法人制度の見直しがあり、NIMSは国立研究開発法人に移行しました。研究所としては70年ほどの歴史がありますが、より機動的な組織(法人)として再編されてからは、24年の期間をかけて種々の新たな試みに取り組んできました。
国内唯一の物質・材料科学に特化した研究所として、NIMSの果たすべき役割はいくつもありますが、我々の活動を一言でまとめると「材料で、世界を変える」ということです。

物質・材料に関する基礎研究、基盤的研究開発を推し進めるとともに、得た研究データを企業や大学などの外部機関と積極的に連携して活用するほか、NIMSの有する最先端の装置を外部の方でも利用できるようにするなど、マテリアル業界を成長させるために活動しています。
また、国内外の大学院と協定を締結したことで、NIMSでの研究活動を通して学位取得ができる仕組みも生まれました。併せて、「NIMSジュニア研究員制度」といった賃金支給型支援制度もあり、エンジニアを含めた若手研究者の育成に力を入れて、長期的視野で業界の発展に資する活動を行っています。

社長と研究者、「二足の草鞋」が可能なNIMS発スタートアップ

スタクラ:

藤崎さんの所属するスタートアップ支援室は2024年7月にできた、フレッシュな部署だと聞きました。スタートアップ支援室は、主にどのような活動をしているのでしょうか。

藤崎 百合恵:

名前のとおり、スタートアップに対するサポートに特化した業務を行っています。とはいえ、NIMS全体でいえばスタートアップ向けの取り組みは2000年代始めから端を発していました。先ほど述べた2001年の研究所統合から今までで、約25社のNIMS発スタートアップ企業が設立されているんです。
岸田政権下で発表された「スタートアップ育成5か年計画」による追い風を受けて、世の流れがスタートアップ企業に向いてきた中で、内閣府が戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)という事業を開始したのですが、そのうちの「マテリアル課題」についてNIMSは取り組むことになりました。

NIMSは課題解決にあたってハブの役割を果たすようになり、SIPを通してスタートアップの成長を見守る中で、「それ専門のチームが必要ではないか」という意識が生まれて、スタートアップ支援室が立ち上がったという背景があります。

スタクラ:

NIMSによるスタートアップ支援には、どういった特徴がありますか。

藤崎 百合恵:

「NIMSでの研究職を辞することなく、スタートアップ企業の社長をやってもいい」という二足の草鞋がオッケーなところはユニークな点だと思います。2018年の法改正以後、NIMSはスタートアップに出資ができるようになったのですが、利益相反等の問題さえクリアすれば、うちで研究を続けながら社長業を兼任することもできます。

この記事を書いた人

スタクラ編集部


スタクラ編集部

「次の100年を照らす、100社を創出する」スタクラの編集部です。スタートアップにまつわる情報をお届けします。

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)

国立研究開発法人 物質・材料研究機構(NIMS)
https://www.nims.go.jp/index.html

NIMS(ニムス)は、国内で唯一、物質・材料科学の研究に特化した国立研究開発法人です。
世界を構成する様々な「物質」。その中で私たちの生活を支えているのが「材料」です。その材料も、大きくは有機・高分子材料、無機材料に分類でき、無機材料はさらに金属材料とセラミックス材料とに分けられます。
石器時代から産業革命を経て現代まで、人類の発展はこの材料の進歩とともにありましたが、近年では、地球規模の環境や資源問題の解決手段のひとつとしても注目が高まっています。NIMSはその物質・材料に関する研究に特化した国立研究開発法人として、「明日を創る材料研究」をテーマに、未来を拓く物質・材料の研究に日々取り組んでいます。
*NIMS公式HPより引用