【東京】大学発ディープテック特集

東京は、日本の経済・技術の中心地であり、大学発スタートアップの数が日本一を誇るイノベーションの拠点です。特に、AI、ロボティクス、バイオテクノロジーなどのディープテック分野では、東京大学や東京工業大学をはじめとする研究機関から次々と革新的な技術が生まれています。資金調達の環境や企業との連携も進み、スタートアップは国内市場にとどまらず世界に展開。本記事では、東京のディープテックスタートアップの最前線に迫ります。

脱炭素実現に向けて|株式会社EVERSTEEL

株式会社EVERSTEELは、東京大学発のスタートアップで、鉄鋼材のリサイクル原料である「鉄スクラップ」をAIで自動解析し、効率的な品質管理を可能にするアプリケーションの開発を行っています。 同社の代表取締役である田島圭二郎氏は、東京大学での鉄鋼材リサイクルの研究とスイス工科大学での画像解析技術の研究をもとに創業し、その後も鉄リサイクルに特化した画像解析技術の研究開発に力を注いできました。 電炉最大手の東京製鐵を始め、複数の業界大手鉄鋼メーカーとの実証実験を経て、同社のアプリケーションは、国内10社弱の現場へと導入検討が進むなど、着実に前進している状況についてお話を伺いました。

世界と戦えるユニコーン企業に|株式会社Premo

株式会社Premoは、東京大学大学院の入江教授らの研究成果を実用化するため、2020年に設立されたスタートアップです。 同社は、半導体チップ同士が基板を介さずに通信できる独自技術を開発し、コンピュータの小型・軽量化や、従来配置が難しかった分野での応用を目指しています。 代表取締役の辻秀典氏は、幼少期から電気やプログラミングに興味を持ち、東京工業大学や東京大学大学院での研究を経て、起業家としての道を歩んできました。 同社は、大学に眠る優れた技術を発掘し、世界と戦えるユニコーン企業になることを目指す同社について、詳しく伺いました。

ヒトの身体やコミュニケーションを科学する|株式会社Sapeet

株式会社Sapeetは、人間の身体性・精神性・行動をデータとロジックに基づき分析・可視化する技術を開発し、デスクレスワーカーのアナログな情報管理を変革を目指すスタートアップ。 代表取締役の築山英治氏は、東京大学大学院在学中にクラウド3D着装シミュレーションの研究に従事し、その技術を基盤として2016年に同社を設立しました。 同社は、AI身体分析や3D可視化、自然言語処理などの技術を活用し、2020年1月には自社プロダクト「シセイカルテ」をリリース。 これにより、人と社会がより最適な状態で触れ合い、人々のポテンシャルを解放し、生活の質を高めることを目指す取り組みについてざっくばらんに伺いました。

成功の秘訣は「サラリーマン気質」|株式会社アイデミー

株式会社アイデミー(Aidemy)は、AIに強い組織体制を構築するためのクラウドソリューション「Aidemy」を開発・運営しているスタートアップです。 代表取締役CEOの石川聡彦氏は、東京大学工学部卒業後、研究・実務でデータ解析に従事した経験を活かし、2017年に同社を設立しました。 同社のミッションは、AIを始めとする先端技術と産業領域の融合に取り組む人と組織を支援することです。 石川氏は、学生時代に歌舞伎役者として活動した異色の経歴を持ち、数々の失敗を経て起業家としての道を歩んできたことについて詳しく伺いました。

トップランナーとして産学協創を牽引|東京大学 産学協創推進本部

いち早くスタートアップの創出・支援に取り組み、業界の礎を築いた東京大学。同大発スタートアップは毎年40〜50社ペースで設立され、圧倒的な数を誇っています。東京大学産学協創推進本部は現在、株式会社東京大学TLO、東京大学協創プラットフォーム開発株式会社(東大IPC)、株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)と緊密に連携して活動。地球規模の課題解決に貢献することをめざしています。

2009年から同大学でスタートアップ支援に取り組む、東京大学産学協創推進本部の菅原岳人氏にインタビューしました。スタートアップ黎明期の日々からディープテックスタートアップが直面する課題まで、多くのお話を伺いました。広い視野で世界の課題や日本経済、業界全体について考える菅原氏からは、フロントランナーとしての自負と信念が感じられました。

AIとセンシング技術で変革|株式会社Smile LOCOt

多種多様なテクノロジーの進展により、理学療法業界にもさまざまなICT革命が起きつつあります。
大規模な設備が必要であった人間の動作解析も、スマホと簡易的な歩行計測システム等で実現できる時代。機能回復がメインであったこれまでの理学療法も、より幸せで豊かな生活を提供する役目へと移行していく必要があると考えられています。

そんな未来を見据え、理学療法×医療テクノロジーの可能性を探究し、社会実装につなげている会社があります。

単にリハビリテーションを必要としている障がい者だけでなく、健康に気を使う多くの人々を対象とし、運動指導のパーソナライゼーションやコンサルティング等を通して健康的な生活の実現をサポートする順天堂大学発のベンチャー企業、株式会社Smile LOCOtの代表松田雅弘氏にお話をお伺いしました。

新しい医療の形とは?|メタジェンセラピューティクス株式会社

腸内フローラという言葉を耳にしたことはありますか?
今回インタビューさせていただいたメタジェンセラピューティクス株式会社は、この腸内フローラ(=腸内細菌叢)についての研究を行い、医療と創薬でソーシャルインパクトを生み出す順天堂大学、慶應義塾大学、東京科学大学発のベンチャー企業です。

腸内細菌叢移植(FMT:Fecal Microbiota Transplantation)と呼ばれるこの治療方法は、健康な人の便に含まれている腸内細菌叢を、疾患を持つ患者さんの腸に移植し、バランスのとれた腸内細菌叢を再構築するというもの。

メタジェンセラピューティクス社CMO(Chief Medical Officer)である石川氏は、腸内細菌療法の臨床研究責任者として同事業に携わり、“研究を研究として終わらせたくない”という想いでFMTの社会実装に取り組んでいます。

遺伝性難聴治療薬の開発に挑む|株式会社ギャップジャンクション

「聴こえと健康により豊かな生活を実現する」というミッションを掲げ、遺伝性難聴の治療薬開発に取り組んでいるギャップジャンクション社。設立から4年で従業員数は10名を超え、2024年06には大手創薬メーカーとの業務提携を発表するなど、これまで順調に業容を拡大しています。
しかし、ここまでの道のりは決して順風満帆ではなく、さまざまな課題や壁にぶち当たりながらの船出でした。

ギャップジャンクション社代表取締役の神谷氏は、順天堂大学にて研究者として独自の遺伝子細胞工学技術を探究し、複数の特許を取得した実績があり、その成果を社会実装する目的で起業しました。遺伝性難聴という根本的治療が最も難しい疾患に対し、どのように挑み、どのように事業を成長させるのか。創業までのストーリーや創薬への想い、そしてIPOを見据えた今後のビジョンについて詳しく伺いました。

AIによる判読支援で医療格差解消を|株式会社Sigron

近年の医療業界、特に地方医療においては、脳波診断ができる専門医が慢性的に不足しています。
脳波検査はてんかんの診断と治療経過の判断に不可欠な検査であり、検査を必要とする患者数と診断する医師のリソースのアンバランスさは、時に適切な治療の遅れを招く要因にもなりかねません。

株式会社Sigronは、「脳波遠隔診断で医療格差をなくす」をミッションとして、AIによる脳波診断支援システムを開発している順天堂大学発のベンチャー企業です。
脳波共有プラットフォームである「NeuroCloud」を活用して脳波データを専門医と共有し、AIによる脳波判読をひとつのツールとして用いながら適切な診断と治療の提供をサポートしています。

今回は、このような社会的意義の高い事業を展開している代表取締役CEO中島円氏に、事業への取り組みや今後の展開について詳しくお話をお伺いしてきました。

再生医療「血管再生技術」で患者を救う|株式会社リィエイル

虚血性疾患とは、動脈が狭窄や閉塞することで血行が悪化し、体組織に酸素が行き渡らなくなることで発生する疾患です。悪化すれば組織が壊死し、部位の切断を余儀なくされる可能性もあります。

根本的な治療は血流を改善することですが、血管内治療やバイパス手術以外の手法の一つとして注目されているのが血管再生医療です。
順天堂大学では難治性虚血性下肢潰瘍に対する細胞治療の医師主導治験を開始するなど、この分野に対して積極的にアクションを起こしています。その中で誕生したのが順天堂大学初医療ベンチャーの株式会社リィエイルです。

今回は血管再生医療技術を活用した事業を展開している株式会社リィエイル代表取締役の田中里佳氏及び同取締役の本多壮一郎氏にお話をお伺いしました。

東大発の生成AI技術で、日本のビジネスを変革する|株式会社neoAI

2030年には2110億ドルの市場規模になると予測される生成AI。生成AIは社会のあらゆるシーンを変革する可能性を秘めた技術といえます。しかし、セキュリティなどの問題から、世界と比べると日本における生成AIの活用は遅れていると言わざるを得ません。

そんな背景のもと、東京大学松尾研究室で培った最先端技術を、多様なビジネスの現場へタイムリーに応用し、企業の課題解決に貢献しようと取り組んでいるスタートアップがあります。それが株式会社neoAIです。

同社の代表取締役である千葉駿介氏は、東京大学工学部在学中にAirCloset社やサイバーエージェント社でのインターンシップ経験を経て、neoAI社を創業。2024年9月には、「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2024」のSCIENCE & TECHNOLOGY & SOCIAL部門にも選出されました。

高校時代までは全く起業を考えておらず、どちらかといえば副リーダーポジションを好んでいたという千葉氏。そんな彼がなぜ、大学在学中に起業という道を選んだのか。千葉氏の生い立ちからneoAI社立ち上げまでの経緯、そして創業後に感じた壁や今後の展望について詳しくお話を伺いました。

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根岸 やすゆき

2003年、エン・ジャパン株式会社に入社。制作部門長、プロモーション本部長を歴任。2013年、ランサーズ株式会社に参画。取締役CMOを経て、現在はCEvO(チーフエバンジェリストオフィサー)として、個人の働き方、組織や事業の作り方を全国に広める活動に従事。2023年4月よりCMOに就任し、2024年9月よりCCO(Chief Communication Officer)として主に対外コミュニケーションを通してのプロモーション戦略・関係構築を担当。