
京都は、古都の風情と最先端技術が融合する特別な場所です。近年、この地から生まれるディープテック系の大学発スタートアップが世界的に注目を集めています。量子コンピューター、バイオテクノロジー、AIなどの最先端分野で革新を起こし、グローバル市場へ挑む企業が次々と誕生。京都大学や同志社大学などの研究成果を活かし、世界の課題を解決する技術がここから生まれています。本記事では、京都発のディープテックスタートアップの魅力と、そのグローバルな展開について深掘りします。
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社会を変える|京都大学イノベーションキャピタル株式会社
京都大学イノベーションキャピタル株式会社(京都iCAP)は、京都大学をはじめとする国立大学の研究者による知の事業化をめざす企業に、基礎研究から事業化までをシームレスに支援しています。京都大学と緊密に連携し、民間VCでは投資困難なシードからアーリーステージ企業への投資を中心に、京都大学の研究成果の紹介、事業計画や資本政策の作成支援、ファイナンス支援、仕入先や販売先開拓の支援などを積極的に行っています。
大手製薬会社を退職して2016年8月から京都iCAPに加わった八木信宏氏に、キャリアチェンジの理由をはじめ、京都大学が得意とする研究分野、京都での暮らしなど、多岐にわたってお話を伺いました。

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京都大学イノベーションキャピタル株式会社執行役員・投資第一部 部長 八木 信宏氏
インキュベーションに力を|京都大学イノベーションキャピタル株式会社
高度な技術が画期的なアイデアがあっても、ビジネスの経験やノウハウがないため、事業化が難しいケースは少なくありません。そこで多くの組織が取り組み始めているのが、「EIR」(客員起業家)です。VCに所属しながらもより確度の高い新規事業の立ち上げを狙うEIRは、起業家にとって有益なキャリアパスとして期待されています。
EIRは、元々VCが投資先スタートアップの新規事業立ち上げなどを担う人材のために用意したポストとも言われています。昨今は企業や大学もこのEIRを活用し、新規事業を立ち上げています。
京都大学の100%出資によって2014年12月に設立され、大学の研究成果を活用するスタートアップ企業への投資を行う、京都大学イノベーションキャピタル株式会社(京都iCAP)もそのひとつ。2024年7月から京都iCAPでEIRとして働く中小司和弘氏に、京都iCAP で働く魅力やEIRに必要な資質、起業をめざす人へのアドバイスなどを伺いました。

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京都大学イノベーションキャピタル株式会社客員起業家(EIR) 中小司 和広氏
空のインフラ整備を|メトロウェザー株式会社
人や物資を空中で自由に移動させることができる技術として注目されているエアモビリティ。第5期科学技術基本計画にて提唱された未来社会の青写真「Society5.0」にも組み込まれており、今までにない空の利活用に期待が寄せられています。
しかし、ドローンや空飛ぶクルマといった次世代モビリティの社会実装には、安全性・経済性・環境性という3点の課題解決が欠かせません。特に交通システムにおいて最も重要な要素である安全性については、長年議論がなされてきました。
そんなエアモビリティ社会の実現に向けて、都市の風況を可視化する技術を駆使し、空の安全性を担保するインフラを整備しようと取り組んでいる京都大学発のスタートアップがあります。それが、メトロウェザー株式会社です。
メトロウェザー社代表取締役の古本淳一氏は、京都大学の研究室で長年大型レーダー研究をしてきた実績があり、長年アカデミアの世界で活躍されていました。そこから、なぜ起業という道を選び、エアモビリティ事業に挑んだのか。創業までのストーリーやプロダクト開発への想い、そしてグローバル展開を見据えた今後のビジョンについて詳しく伺いました。

Vol.142 メトロウェザー株式会社 代表取締役 古本淳一氏

メトロウェザー株式会社代表取締役 古本淳一氏
効率的かつ低コストの発電とCO2回収を可能に|ライノフラックス株式会社
カーボンニュートラル社会の実現に向けた取り組みが進む中、再エネ転換と並んで求められているのが、大気中からCO2を取り除く技術です。多くは莫大な費用がかかるため普及に至っていませんが、京都大学がバイオマスを燃やすことなくエネルギーに変換する技術を開発。従来の火力発電の2~4倍の発電効率、半分以下のコストで電力をつくり、99%以上のCO2を回収します。
この技術を社会実装すべく2024年4月に立ち上げられたのが、電気エネルギーとCO2の回収プラントを設計・開発するライノフラックス株式会社です。京都iCAPのEIR(客員企業家)を経て開発者とともに同社を立ち上げた間澤敦さん、そして技術面を統括する萩本陽和さんに、チーム編成の強みや特徴、現在必要としている人材、特にエンジニアに求める資質などを伺いました。

【京都特集】専用プラント開発で、効率的かつ低コストの発電とCO2回収を可能に

ライノフラックス株式会社代表取締役 間澤 敦氏
ディープテックに特化した投資でシードから支援|京都大学イノベーションキャピタル株式会社
近年、日本の大学発スタートアップが注目を集めています。特に、国立大学の研究成果を社会に実装し、新たな産業を生み出す動きが加速しており、その支援のために大学独自のベンチャーキャピタルが設立されるケースも増えてきました。こうした流れの中で、京都大学イノベーションキャピタル(以下、京都iCAP)は、研究者とともに最先端技術を社会に届けるべく、独自の取り組みを続けています。
京都iCAPは、大学発スタートアップを単なる投資対象としてではなく、技術の社会実装を推進する「伴走者」として支援することを目的に設立されました。特に、ディープテック領域に特化し、シード期からの会社設立支援や長期的な成長支援に力を入れています。
こうしたスタートアップ支援の背景には、どのような課題やビジョンがあるのか。京都大学イノベーションキャピタルの代表である楠美公氏に、その設立の経緯やディープテック投資の意義、そして大学発スタートアップの未来について伺いました。

【京都特集】ディープテックに特化した投資で京大発スタートアップをシードから支援

京都大学イノベーションキャピタル株式会社代表取締役社長 楠美公氏