「起業家と心を一つにし、新たな産業を創造し続ける」「スタートアップエコシステム構築に貢献し、共に成長する」という2つのミッションを掲げ、CVC立上げやオープンイノベーション活動の支援、スタートアップエコシステム構築の支援などを手掛けるMTG Ventures社。
2つのファンドを運営し、愛知県・東海エリアにとどまらず日本全国のベンチャー、スタートアップ企業の誕生・成長を支援しています。
今回お話を伺ったのは、MTG Venturesの代表取締役である藤田豪氏。藤田氏が運営する2つのファンドの特徴や支援内容、20年以上住み続けている名古屋で働く魅力などについて、ざっくばらんにお話しいただきました。
代表取締役
藤田 豪氏
1974年秋田県出身。明治大学経営学部卒。1997年、日本合同ファイナンス株式会社(現:ジャフコ グループ株式会社)入社。シードからレーターステージまでの投資、投資先各社での取締役就任、ファンド募集など手掛け、自動運転、AI、といった分野への投資を行ってきた。
2018年、株式会社MTG Ventures代表取締役就任。MTGグループのコーポレートベンチャーキャピタルとして、これまで6,000人以上の経営者との出会いによって培われた視点をベースに、「VITAL LIFE」を実現するスタートアップへの投資を行っている。2022年、地域課題を解決するシード特化ファンド「Central Japan Seed Fund」設立。
株式会社MTG Ventures
https://mtgv.vc/
≪MISSION≫
「起業家と心を一つにし、新たな産業を創造し続ける」
わたしたちはスタートアップへの投資によって持続性ある社会の構築に貢献します。
「スタートアップエコシステム構築に貢献し、共に成長する」
イノベーションの土壌をつくるため、知識やノウハウの提供を積極的に行っています。
≪事業内容≫
スタートアップへの投資を通じ、「持続可能な社会の構築」と「新産業の創造」を目指すベンチャーキャピタル。
「VITAL LIFE」をテーマに、スタートアップへの投資・支援に加え、地域課題解決に挑む起業家への投資・支援も推進。
中部地区の大企業を中心に、CVCの量と質の向上を図る知見共有と情報交換のためのコミュニティも運営。
- 目次 -
藤田氏が運営する2つのファンドの特徴
MTG Ventures社の特徴や事業内容などを教えてください。
弊社は、2018年に親会社であるMTGのCVC(コーポレートベンチャーキャピタル※)として設立されました。親会社の事業ビジョンである「Vital Life」をテーマに、主に美容・健康系のジャンルの会社に投資を行っています。
弊社のファンド「VITAL LIFE 投資ファンド」の特徴として、シナジー投資を必要とせず、ファイナンシャルリターンを目的とした投資に専念している点が挙げられます。投資先のジャンルは絞っていますが、IPOが期待できる会社に投資を行っています。
これまで37社に投資を行い、そのうち2社がIPOを果たしています。現在も多くの数の投資先で上場準備を進めているので、数年後にIPOを果たす投資先も一定数見込まれています。
また、地域貢献の一環として、愛知県や名古屋市、名古屋大学などと連携しながらエコシステムの構築を支援しています。2022年には地域課題の解決を目指すシード期のスタートアップ特化型のファンド「Central Japan Seed Fund」も設立しました。
※:事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場のベンチャー企業に出資や支援を行う活動組織のこと
大学時代のゼミや投資先の縁が重なり現職に至る
次に、藤田さんご自身の略歴や仕事内容などを教えてください。秋田県出身の藤田さんが現在、名古屋で活躍されている経緯が気になります。
私は高校まで秋田にいまして、明治大学経営学部への進学に伴い上京しました。3年生でゼミに入ったことをきっかけにベンチャーについて興味を持ち、ベンチャーキャピタル(VC)もしくはベンチャー企業への就職を希望するようになりました。他のゼミ生はほとんど銀行に就職していきましたね(笑)。
それからベンチャー関連書籍に載っていたVC一覧を頼りに、片っ端から「キャピタリストになりたい」と手紙を送りました。ただ当時はほとんどのVCは新卒採用を行っていなかったので、新卒採用を行っている別の会社を紹介してもらったり、まずは事業会社への入社をおすすめするとお返事をいただいたりしましたね。結果的にVCの日本合同ファイナンス(現:ジャフコ グループ)に入社したのが1997年のことです。
入社し初めての赴任先が名古屋で、その後の本社勤務を経て2005年に再び名古屋へ戻り、それ以降はずっと名古屋にいます。ジャフコには20年弱所属していましたが、そのうち16年半は名古屋にいましたので、基本的にジャフコでは東海地域におけるベンチャー投資のノウハウを学び、それが現在の仕事にも役立っています。
MTGもジャフコでの私の投資先の一社で、2018年に上場を果たしていますが、その際に松下社長に「一緒にやらないか」とお声がけいただきました。多くの経営者を見てきた中でも松下社長は特に素晴らしく優秀な方で、一緒に仕事をしたいと思っていましたので、お声がけ頂いたことをきっかけにMTGに入社し、後にMTG Venturesを設立したというのが略歴です。
東海地域のエコシステムを構築し、投資で貢献したい
Central Japan Seed Fund」を組成した経緯をお聞きしてもよろしいでしょうか?
もともと私自身のビジョンとして「地域・地方にお金を回して起業家を育てていきたい」「ベンチャーキャピタリストを増やしたい」というのがありました。MTG Venturesの設立後も講演など地域での活動を行っていく中で、東海地域のエコシステム構築においてシードファンドの必要性を感じており、三井住友銀行(SMBC)からご提案いただいたこともあって「Central Japan Seed Fund」の組成に至りました。SMBCには、アンカー出資もしていただいています。
「Central Japan Seed Fund」は地域のファンドなので、基本的には地域の人達に資金を出していただきつつ、地域貢献につながる投資を行っています。現在は、東海以外の地域にも投資を行うなど、投資対象エリアを拡大中です。
北海道から沖縄まで広くネットワークを構築
Central Japan Seed Fundの具体的な支援の特徴があれば教えてください。
Central Japan Seed Fundでは、現在LP(Limited Partnership:有限責任組合員)が合計28社、投資先を約60社抱えています。支援の大きな特徴としては、ネットワークが豊富なことが挙げられると思います。この2年間で35都道府県を周り、各自治体関係者や地銀などとネットワークを構築しており、投資先に最適と思われる出資者・協業先などを紹介できるようになっています。
地域にコミットしながら、名古屋市に限らず北海道から沖縄まで広くサポートできるのがMTG Venturesの強みですね。
名古屋は日本の真ん中、利便性が良いことも魅力
藤田さんの立場から見た、愛知県・東海エリアの魅力はどこにあるとお考えでしょうか?
地理的な観点から言うと、名古屋は日本列島の真ん中あたりに位置する地域で、「日本中どこへ行くにも遠くない」というのが大きな魅力の一つだと思います。大阪京都はもちろん、北陸や北海道や沖縄なども無理なく日帰り出張ができます。
名古屋市から中部国際空港までは30分、名古屋空港(小牧空港)までは20分程度で行けるほか、少し足を延ばせば自動車で奥飛騨温泉や浜松などにも気軽にアクセスできるなど、非常に利便性が良いです。
車社会なので東京と違って電車が混むこともありません。車線数が多く、自動車渋滞もそれほど起こりませんね。総じて、移動の便が良いことも名古屋の魅力の一つだと思っています。
名古屋市以外にも魅力的な市町村があります。名古屋市の隣にある長久手市は、2005年に愛・地球博の開催地となりましたが、東海エリアの「街の住みここちランキング」で常に上位にランクインしています。
名古屋市周辺には大学も多く、子どもの教育にも非常に力を入れています。最近では「Tongaliプロジェクト※」も進められていて、起業について学べる環境が整っており、採用面でも、優秀なインターン生を確保しやすいです。
※:東海エリアの学部生・大学院生・ポスドクター・教職員・卒業生を対象に、次世代の起業家を育成・支援する多面的なプログラムを提供する
協業の機運が高まっておりビジネスチャンスは増えている
愛知県・東海エリアスタートアップの魅力としては、どんなものがあるでしょうか?
本地域のスタートアップの大きな特徴としては、モノづくりや研究開発のインフラが整っている点が挙げられます。「AI」とロボットなどの「ハードウェア」を組み合わせた事業を展開するスタートアップも多いです。
東京都や大阪府と比べると、愛知県のコミュニティの規模は小さい印象ですが、その分自治体の首長や大企業の社長、大学の先生など、組織のトップクラスや重要ポストに就いている人に会いやすい環境はあると思います。スタートアップの立場からすると、実証実験や投資による資金調達、協業などを行いやすい点は大きな魅力ではないでしょうか。
最近はコロナ禍やEV化の進行などを受けて、スタートアップとの協業を考える大企業が増えてきているので、ビジネスチャンスはさらに広がっていると思います。兼業・副業を認める大企業も徐々に増えてきており、大企業の優秀な人材がスタートアップに出向する事例も見られるようになってきました。
情報共有が盛んなコミュニティで良い人間関係を築ける
愛知県・東海エリアにおけるスタートアップの働き方にも特徴はありますか?
みんな仲が良い印象で、良好な人間関係を構築しているように思っています。みんなで一緒に食べたり飲んだり、プライベートでも仲良くしているところをよく見ますね。
証券会社やコンサルタント、人材会社などサポーター側のコミュニティも小さいので、スタートアップの人も含めてみんなで飲みに行くことも多いです。そのような場でも、自身の経験談を他の事業分野の人達とも積極的に共有し合い、相互補助的な関係を築けていると思います。
変な派閥もありませんし、コミュニティが小さいからこそお互いに良い関係性ができていることも、ひとつの特徴と言えるでしょう。
昔から名古屋には閉鎖的というイメージがあり「新規営業は難しい」とよく言われていましたが、信頼関係を構築して仲間になってしまえば、むしろコミュニティに助けられるという場面は多いと思いますね。
夏は暑いがテーマパークも近くファミリーで楽しめる街
県外から移住して愛知・東海エリアのスタートアップで働くにあたって、ネガティブに感じやすい点、ギャップを感じやすい点があれば教えてください。
気候の面で言えば、夏は暑いことですかね。今年(2024年)で言うと、猛暑日が25日間続いて、観測史上最長を更新したほど名古屋の暑さは目立っていました。沖縄から出向してきた人も「名古屋は暑いから帰りたい」と愚痴をこぼしていましたね(笑)。
また、どて煮や味噌カツをはじめ甘い味付けの食べ物が多いですね。私は東北出身でしょっぱい食べ物が好きなので、どて煮を初めて食べたときはギャップを感じました。
それから、現在は名古屋城の復元工事中ということもあり、市内で観光できる場所が少ないと感じるかもしれませんが、最近ではレゴランドやジブリパークができましたし、動物園や水族館もありますので、子ども連れで遊びに行く場所は多いです。
ただ、どこに行くにも車の方が行きやすいので、自家用車はあった方がよいかもしれませんが、免許を持っていない人にとっては免許の取得から始めなければならず、その点では少し手間がかかるかもしれませんね。
家族との時間を大切に、仕事にも全力で取り組める人
移住して名古屋のスタートアップで働くのに向いている人はどんな人でしょうか?また、名古屋のスタートアップで働くことに迷っている人に向けてメッセージがあればお願いします。
「仕事だけではなく遊びにもしっかり力を入れたい」という人は向いていると思います。キャンプ場やゴルフ場もありますし、少し足を延ばせば自然を感じられ、釣りを楽しむこともできます。また、このインタビュー記事を読んでくださっている方の中には、家庭があってお子さんがいるという方も多いと思いますが、東京に比べると通勤時間が短い傾向にありますので、家族との時間もとりやすく、遊びや子育て、家庭に時間を使いたいという人にはよい環境だと思います。
確かに東京はすべてが揃っていて便利な街ですが、ワークライフバランスを考え、時間的にはゆとりがありながら、仕事を頑張りたいとお考えであれば、ぜひ移住を検討してみてはいかがでしょうか。
貴重なお話、ありがとうございました。
株式会社MTG Ventures
https://mtgv.vc/
≪MISSION≫
「起業家と心を一つにし、新たな産業を創造し続ける」
わたしたちはスタートアップへの投資によって持続性ある社会の構築に貢献します。
「スタートアップエコシステム構築に貢献し、共に成長する」
イノベーションの土壌をつくるため、知識やノウハウの提供を積極的に行っています。
≪事業内容≫
スタートアップへの投資を通じ、「持続可能な社会の構築」と「新産業の創造」を目指すベンチャーキャピタル。
「VITAL LIFE」をテーマに、スタートアップへの投資・支援に加え、地域課題解決に挑む起業家への投資・支援も推進。
中部地区の大企業を中心に、CVCの量と質の向上を図る知見共有と情報交換のためのコミュニティも運営。